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LIFE

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命はひとつ。人はみんな誰しもが世界にたったひとつのオンリーワン。
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2020年4月の記事一覧

余命宣告と看取りの季節

余命宣告と看取りの季節

「明日の朝まで俺は生きていられるのかな」

彼は笑いながら言った。

冗談半分、本気半分なのか。もしくは本気中の本気で言ったのかもしれない。

その日緊急で運ばれてきた彼は
長年自分が担当していた患者だった。
自宅から嘔吐を繰り返していて、
検査中に意識レベル低下、重体となった。

SAH(くも膜下出血)Grade 5(最重症)

突然、帰らぬ人となった。

今の時代、病名や余命を本人に伝

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繰り返される命の鼓動と選択

繰り返される命の鼓動と選択

5歳、女児。心肺停止。

その情報が入ったのは、
ある日の日付が変わる頃だった。

救急車が近くなってくる街の音はいつものことで、その日もいつもと同じように対応すればいいと思っていた。

ある一つの疑念を抱くまでは。

異変その子の両親は自宅で我が子の異変に気付き、救急要請をした。そして救急隊員が到着するまで、指示に従って心臓マッサージを開始した。

女児の心臓が止まり脳への血流が途絶

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突然現れた未来からの使者

突然現れた未来からの使者

日本国、東京。

その初老の女性は、ある日突然現れた。

初めて接触し診察した
新型コロナウイルス感染症の
最重症症例だった。

ただならぬその雰囲気に、
いつもは感じない空気を感じていた。

そしてこれから起こるであろう日本の事態も
そこで自分たちは予測した。

急に現場が慌ただしくなった。
自分たち以外の周囲の人を遠ざけ、
個室隔離が余儀なくされた。

レントゲン上、両肺は真っ

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みんな誰かのオンリーワン

みんな誰かのオンリーワン

「For nine years.
Can you imagine what a long time it is? 」
(9年間。あなたはそれがどれだけ長い年月か、想像することができますか?)

と冒頭で話しかける

『命を大切に』と訳した英語のスピーチは、
中学生の頃の
最初の強い自己主張だったのかもしれない。

中学3年生で、学年から2人、
英語の弁論大会に出られるという。
それは毎年3年生が

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神様のカルテと遺言書

神様のカルテと遺言書

ずっと心の中にあるものが、
この季節になると、
春の雪解けかのように、鮮明に蘇る。

82歳の彼の傍らには、
一枚の塗り絵が置かれていた。

それは、もう何年も前の話。

あの時、悲しみに暮れた自分の心に
手を差し伸べるように、

同僚は「そばにいてやれ」と言った。

Oさんは末期の胃ガンで、
もう長いこと病院のベッドの上が
彼の生活の場だった。

持続の皮下注射で
膨れた腹を気に

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孤高の山と孤独のファイター

孤高の山と孤独のファイター

小さな命が発したのは、孤独のサインだった。

自分の専門分野には小児が抱える病気もあって、病気が子供たちの心や体の成長を妨げていることもある。

病気を抱えた子供たちは自分自身ととても良く向き合っているし、「将来〇〇になるんだ」と言って、学校や保育園に行けないながらも一生懸命勉強したりしている。

周りにはたくさんの大人たちがいるけれど、
子供たちはいつも孤独を感じていることを、
ふと

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