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ニュースの手帖

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#日本経済新聞

「法案のミス多発」と「政治主導」が深く関係している件

「法案のミス多発」と「政治主導」が深く関係している件

▼最近の日本経済新聞のコラムで面白かったもの、の続き。

2021年3月28日付の「春秋」。政治主導とコロナ禍で、官僚にかつてない疲れがたまっている問題について。

まず、冒頭が面白い。

〈「次に掲げる」をどう読むか? 霞が関の官庁街では「ジにケイげる」が正解である。法案作成で誤字は許されない。そこで送り仮名や同音異義語のミスをなくすため音読み訓読みを工夫する。規定はキサダで規程はキホド。奇妙な

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「バブル経済」と「ウイルス」は結構関係が深い件

「バブル経済」と「ウイルス」は結構関係が深い件

▼最近の日本経済新聞のコラム「春秋」から、面白かったコラムをいくつか紹介したい。今号は、2021年3月27日付。

〈世界で最初の経済バブルは、17世紀半ばにオランダで起きた。チューリップバブルである。合理的で無駄づかいを嫌うお国柄で知られる人々が、植物の球根に狂乱した。先物取引も登場、たった1個に邸宅が買えるほどの値段がついたというから、なんともすさまじい。〉

▼特に珍重(ちんちょう)されたの

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小学校の先生の採用倍率が3倍を切っている件

小学校の先生の採用倍率が3倍を切っている件

▼小学校の教員の採用試験に限らず、倍率が3倍を切ったら、その合格者に求められる最低限のレベルが保てない。今まさに、日本の小学校がそういうレベルになっている、という話。以前も小誌で紹介したが、あらためて報道されたので、紹介する。

2021年3月26日付日本経済新聞から。

〈教員の採用倍率「危険水域」/小学校2.7倍過去最低、質に不安/35人学級で必要数増加〉

▼この記事は、この見出しで、ほぼす

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技能実習生がもう限界の件

▼コロナ禍で苦しむのは、女性、こども、そして外国人である。

2021年3月22日付日本経済新聞に、外国人の苦しみについてよくわかる記事が載っていた。適宜改行と太字。

〈技能実習生 もう限界/仕事失い帰国できず、コロナで二重苦/「生活苦で犯罪」防ぐ支援を〉

〈新型コロナウイルスの影響で、苦境に陥る外国人技能実習生が後を絶たない。雇用情勢の悪化などで働き先を失い、帰国しようにも渡航制限でかなわな

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コロナ禍で苦しみの限界を超えてしまった件 2020年の自殺者数確定値

コロナ禍で苦しみの限界を超えてしまった件 2020年の自殺者数確定値

▼2020年の自殺者数の確定値が報道された。すでに2月に速報値が報道されており、ほぼ同じ内容だが、ここでメモしておく。

▼まず、2021年3月16日付の読売夕刊1面トップから。

〈女性の自殺15・4%増/7026人、コロナ影響か/20年確定値〉

〈厚生労働省と警察庁は16日、2020年の自殺者数が確定値で前年より4・5%(912人)増の2万1081人だったと発表した。女性は同15・4%(93

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国は地方が使うカネに基準や条件を付けて縛ってきた件 東日本大震災10年

国は地方が使うカネに基準や条件を付けて縛ってきた件 東日本大震災10年

▼地方自治体を批判する記事が2021年3月16日付の日本経済新聞1面に載った。「日本は変われたか/大震災10年」という連載記事。

〈国頼み、空洞化する自治 「首長が本気なら注文もっと」/日本は変われたか 大震災10年(5)〉2021年3月16日 0:00

▼東日本大震災から10年を振り返る企画。

この回では、大震災後、国が定めた5年間の「集中復興期間」で27兆円が使われたこと、しかし「復興支

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技能実習生が日本政府から「生活者」として扱われていない件

技能実習生が日本政府から「生活者」として扱われていない件

▼日本という国家が、外国人労働者をどのように扱っているのか。2020年10月20日付日本経済新聞に載った斉藤善久氏(神戸大学准教授)の論文が興味深かった。

〈外国人労働者政策の課題/生活者としての環境整備を〉

▼「生活者」がキーワードだ。要するに「外国人を人間として扱っているのかどうか」が問われている。

記事のポイントは

〈日本人に不人気な産業が受け入れで延命/人材ビジネスの苦境で働き手確

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コロナ禍で大学の「書く」授業がとても捗(はかど)った件 金原瑞人氏の経験に学ぶ

コロナ禍で大学の「書く」授業がとても捗(はかど)った件 金原瑞人氏の経験に学ぶ

▼2020年は、大学での授業がコロナウイルスの影響で完全にストップして、次第にオンライン授業が増えていったわけだが、そのなかで起きた面白い現象について。翻訳家の金原瑞人氏が2020年10月18日付の日本経済新聞に書いた「書ける若者たち」という文章から。

金原氏は毎年、法政大学で「創作表現論」という授業をしている。適宜改行と太字。

〈普段の対面授業では、日本で最初の本格的な英和辞典「英和対訳袖珍

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ヒトラーを肯定する日本の若者が増えている件

ヒトラーを肯定する日本の若者が増えている件

▼SNSが人間にもたらす影響の全体像は、まだわからないが、2020年10月24日付の日本経済新聞の電子版に、気になるニュースが載っていた。

〈SNSで揺らぐ平和意識 戦争容認、簡単に「いいね」〉

〈戦後75年を過ぎ、過去の戦争や悲劇の歴史について、若者が簡単に肯定的な姿勢を示すケースが目立っている。真偽不明のSNS(交流サイト)の投稿に大量の「いいね」が付いたり、戦争は「仕方ないこと」と捉えた

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アメリカと中国との関係は「新冷戦」ではなく「ハイブリッド戦争」である件

アメリカと中国との関係は「新冷戦」ではなく「ハイブリッド戦争」である件

▼アメリカと中国との関係について、「新しい冷戦だ」という表現を使う人がいるが、そうではないとする論者も多い。筆者は後者に賛成するが、その論のなかでも、わかりやすい説明が2020年10月22日付の日本経済新聞に載っていた。

▼カーネギー財団モスクワセンター所長のドミトリー・トレーニン氏。適宜改行と太字。

〈いまの米中対立を「新冷戦」と称する向きがある。しかし、世界史の中で、冷戦は1度しか起きてい

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王将戦リーグが滅法(めっぽう)面白い件(その2)

王将戦リーグが滅法(めっぽう)面白い件(その2)

▼王将戦リーグがじつに面白い展開になっている。

最大の話題は、藤井聡太氏の3連敗である。10月29日の対佐藤天彦9段戦は勝ったが、依然、リーグ脱落を免れるための戦いが続く。

レーティングの順位は、永瀬氏が負けたので、結局変わらなかった。しかし、今回は永瀬氏が藤井氏にわずか1差まで迫ったので、ひっくり返る可能性は十分にある。

▼さて、永瀬拓矢氏へのインタビュー記事から。日本経済新聞2020年7

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杜撰な「本人確認」で複数の「本人」が誕生している件

杜撰な「本人確認」で複数の「本人」が誕生している件

▼最近、ドコモ口座を悪用して、お金が勝手に引き出されてしまう事件が頻発(ひんぱつ)し、全国的なニュースになった。

不穏(ふおん)なニュースだ。

「時代が変わっても変わらないもの」と、「否応(いやおう)なしに変えなければならないもの」とについて、それぞれ考えさせられる記事があった。

▼ひとつめは、2020年9月22日付の日本経済新聞「春秋」から。適宜太字と改行。

〈数年前、口座をつくるため訪

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マスメディアは互いに批判し合ったほうがいい件

マスメディアは互いに批判し合ったほうがいい件

▼好感のもてるコラムが2020年10月20日付の日本経済新聞「春秋」に載っていた。

▼マスメディアは、互いに批判し合わなければならない。「インサイダー」という映画の名作がある。それを見ればよくわかるが、マスメディアが悪さをした場合、同業他社に批判されることによって、そのマスメディアは、よりよくなることができる。

この原理を支えているものは、泡(あぶく)のように頼りない感情や、党派的な立場論など

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「食糧が最大のワクチンである」件

▼ノーベル平和賞は人々に「考える」きっかけを与える。今年のテーマは「食」だった。NHKニュースから。

〈ノーベル平和賞にWFP 国際社会からの支援拡大に期待の声も 2020年10月10日 4時41分〉

〈ことしのノーベル平和賞に、世界各地で食糧支援を行っている国連機関、WFP=世界食糧計画が選ばれたことについて中東の紛争地などで食糧支援を必要としている人たちからは受賞をきっかけに国際社会からの

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