技能実習生がもう限界の件
▼コロナ禍で苦しむのは、女性、こども、そして外国人である。
2021年3月22日付日本経済新聞に、外国人の苦しみについてよくわかる記事が載っていた。適宜改行と太字。
〈技能実習生 もう限界/仕事失い帰国できず、コロナで二重苦/「生活苦で犯罪」防ぐ支援を〉
〈新型コロナウイルスの影響で、苦境に陥る外国人技能実習生が後を絶たない。雇用情勢の悪化などで働き先を失い、帰国しようにも渡航制限でかなわない。二重苦から日々の生活に困窮し、犯罪に手を染めるケースもある。追い込まれる前の支援を求める声が上がる。(中川竹美)〉
▼帰国できず、かといって働くことも法律で禁じられているのでお金がなくなり、悪さをして、執行猶予になったケースが紹介されていた。
24歳のベトナム人男性。2017年に技能実習生として来日し、1年間の予定で、埼玉の建設会社で働きはじめた。〈人間関係の悪化や仕事の厳しさから失踪し、SNS(交流サイト)で知り合った元実習生らと大阪市の1Kのマンションで共同生活を送った。来日時に約100万円の借金を抱え、返済のためにアルバイトを転々としたという。〉
▼入管難民法の「出国命令制度」を利用して故国に帰ろうとするが、コロナで足止め。働くことは禁じられているから、生活に困った。〈仲間と駐輪場から電動アシスト自転車などを盗み、自転車販売店に転売を繰り返した。「コロナで職が無くなり、生活に困ってやった」。
北関東で起きた家畜や果物が大量に盗まれた事件に絡み、入管法違反で逮捕されたベトナム人の多くも元実習生だった。〉
▼神戸大学の斉藤善久教授いわく「国は住まい先の確保などの生活支援策を講じるべきだ」
▼まず、来日時に100万円の借金を背負わされるシステム。次に、技能実習生に技能を実習させない日本のシステム。さまざまな役立たずのシステムが事件の背景にあることがわかる。それらのシステムについて、マスメディアが大きく報道することは少ない。
これから、どんどん外国人は増えるいっぽうなのだから、もっと大きく報道してしかるべきだ。残念ながら、報道しないと変わらない現実、というものが、世の中にはある。技能実習生の生活苦は、その現実の一つだ。
▼法律は外国人を守らないから、外国人は自分で自分を守るしかなくなる。
この記事には、国が続けてきたその場しのぎ、場当たりの対応の連続が、どのような現実を生むのかが、あぶり絵のように映し出されている。
(2021年3月26日)