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そらをとべないぼくたちの

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雑記/エッセイ まとめ。
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記事一覧

1028個目の呪い

飽きるほど見た妄想みたいに、言いたいこと全部花になって吐いてしまえればいいのに、
その花を綺麗だねと褒めてもらえれば少しはおだやかになれるだろうか、
自分が吐く花は綺麗なはずだって、思いこむことくらいは許してほしい、
どうせ煤のように黒くたって花は綺麗だし、
わたしも同じでわたしであることをやめない限り美しいに決まっているけれど、君の目に止まらなければ意味がないだけ。

今日も欲しい花瓶は買えずに

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一度も着なかった909着目のワンピース

何だかばたばたしてみたり初めてのコロナにかかってみたり体調が戻ったと思ったらお休みを取り返すのにまたばたばたしてみたり、こうして取るに足らない文章を書くのも久しぶりになってしまいました
忙しいくらいで比較的おだやかに毎日は過ぎているのだけれど、おだやかに生きられてしまうことが、そういう自分が、腹立たしくて許せなくて泣きたくなるの、なんでだろうね。

書かなくてもいきていられるわたしになりたくないし

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713回目の世界の終わり

 
気がついたらもう7月になっていて、毎年恒例の新潮文庫のプレミアムカバーで夏のはじまりを想ったりする。
夏が嫌いだとTwitter(Xとは呼ばないことに決めている)では何度も言っているけれど、それは夏がわたしのことをずっと好きになってくれないからで、かわいさ余って憎さ100倍、みたいな、その証拠に夏のことばかりこうして言葉にしたくなる。
夏に愛してもらえるような、ヘルシーな美しさや、うんと自立し

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602号室の天使の羽をちぎって奪った

書きかけの小説の登場人物たちの生活がわたしの生活と同じようにぐるぐると回っている、わたしが言葉にしなければこのひとたちの生は誰にも伝わらないのだけど、別に誰にも伝わらなくてもわたしの世界のどこかでこのひとたちは懸命に生きていて、幸福になったりすることも知っている(わたしは結末を知っているし、結末の先でも彼らはどうせ美しく生きるから)から、
誰かに知ってもらう必要があるのか、とぼんやり思うことがある

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319羽目の名前もない鳥よ

沈みかけのままずっと漂っている船みたいな家を出てから生活が自分の腕の中にふらっとやってきてくれたような気がして、
どうか離れていかないでねと抱きしめたり世話を焼いたりしてるあいだに時間が流れていってしまうね、
最近はずっと、近頃読んでもいないのによだかの星のことばかり思い出すよ、
よだかにも、鳥たちにも、太陽にも、星にも、誰にもなれないような、誰のことも分からないような物語、
だけどきっと、どこか

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ひとりとひとりのふたりぐらし

ひとりとひとりのふたりぐらし

いっちょ前に健やかなふりをして白湯を飲むところから1日は始まる、
100円ショップで100円じゃなかったキラキラのマグカップは大きさもちょうど良くて、レンジに入れても大丈夫だから気に入っている。

イチゴ柄のパジャマを引きずったままねだると、こいびとが食べていたピーナツクリームのコッペパンを3分の1くらいちぎって渡してくれた。
やわらかい甘さが心地いい、このあいだ食べた紅茶味のフレンチトースト、お

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0205個目のセーブポイント

雪が降ってるね、降るたびに言ってるけどさ、雪が降ることをもう喜べなくなって哀しいね。
でも雪がとけたら春が来るって、それだけはずっと忘れないでいたいね、
別に好きじゃない春、特別じゃない春、わたしのものにならない春が。
 
 
上手に話もできないのに、上手に書くこともできなかったら、上手に詩にしてしまえなかったら、わたしの胸のなかの水はそのうち淀んで濁って生き物の住めない場所になってしまうんじゃな

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1月18日の承認欲求

自分の声を嫌いになりそうだったら朗読をしたり歌をうたってみたりするし、自分のへたくそな字を嫌いだから手書きで自己顕示欲を満たしてみたりする、

反骨精神の塊みたいな性分とは反対にこころもからだもぽんこつのがらくたみたいな造りになっちゃって、でもわたしは精工で完璧で傷ひとつない高級なおもちゃよりぽんこつのがらくたみたいなおもちゃが好きだよ、

今日も信号は自分の前でばかり点滅するような気がするし、靴

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-1212℃の体育館で

すれ違った高校生から嗅いだことのある香水の匂いがした、
わたしも文化祭でバンドを組んで歌いたかった、100人に1人くらいは知ってるような曲を歌って、イントロが鳴った瞬間に顔を上げた数人のひとのこと、仲良くはならないまま特別にしたかった、
特別だと思ってほしかった。
わたしのしたかったは全部、後悔でも憧憬でもなくて渇望です、
冬の空気に触れた肌の感想なんかよりずっと、ずっと、喉が乾いています。
 

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1104回目の朝はあのカフェでモーニングを食べようね

1104回目の朝はあのカフェでモーニングを食べようね

 
逃避を幸福と呼ぶのをやめたくて、夜な夜なナイフを研ぐことだけが日課になる。
  
 
刺したいひとたちはみんなみんなあたしのことを知らない、だからまだ太陽は昇らないでほしい、なのにいつも不躾に空は明るくなって、あたしは終点に近づいていくから、降りる駅が決まっていないことに焦りだす。
 
 
 
自分が乗る列車のことを環状運転だと思っているひととは多分仲良くなれない、
仲良くなりたくないの間違い

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冷えた水と1014錠目のサプリ

 
好きなひとと暮らすようになれば家の中でもかわいくいることをもう少し楽しめるようになるだろうか、
お気に入りの自分でいることは自分の機嫌を取る方法のひとつでもあるのに、どこにも行かないのにメイクするのもすぐに食べ物をこぼしたりどこかへ引っ掛けたりするくせに好きな洋服を着るのも、それはそれでMPが削れていくから難しい、
歯を磨いたりお風呂に入るのさえ億劫なの、わたしだけじゃないって教えてくれるイン

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きみのことなんか918番目に嫌い

 
幸福なときはみんなみんな大好きだし、悲しいときはみんなみんなどうでもよくなるし、悔しいときにはみんなみんな嫌いになる。
身勝手なのがあたしだけじゃないって知るにはインターネットは極端で、生温くて居心地が悪いのか、地獄の釜に迷い込んだと絶望すればいいのかわからない。
 
 
大袈裟なことばかり話すけど結局大まかにはしあわせではあるのだと思うから、カネコアヤノのかみつきたい、をかわいく口ずさんでみ

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ピンクのリップでハートを描いた819枚目の窓ガラス

 
セールで買った可愛いジャケットを早く着たいから秋になってほしい、大好きで色んな柄を何着も手に入れたシアーインナーも重ね着するのがお気に入りだし、長袖の柄シャツやふわふわのブラウスを着ていればご機嫌でいられるし、
やっぱりわたしは夏の女になんかなってやらないぞって気持ちで、せめてもの抵抗にパール入りの日焼け止めを塗りこんでいる。
 
  
少し前までは派手な柄シャツに色の濃いリップや赤いアイシャ

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青い鳥は801枚目のTシャツをさらっていった

とうとう8月になってしまった、だからといってどうということはなく、ことしも夏はやっぱりあんまり好きになれないままです。


エアコンのきいた部屋の中で横たわっているあいだ、死ぬまでに読めない本、死ぬまでに見れない映画、死ぬまでに聴けない音楽、死ぬまでに歌えない歌、死ぬまでに着れない服、死ぬまでに立てない場所、のことばかり考えるのは、夏がやけに鮮やかで、みんなわたしとは別の生きものとして生きたり死

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