713回目の世界の終わり

 
気がついたらもう7月になっていて、毎年恒例の新潮文庫のプレミアムカバーで夏のはじまりを想ったりする。
夏が嫌いだとTwitter(Xとは呼ばないことに決めている)では何度も言っているけれど、それは夏がわたしのことをずっと好きになってくれないからで、かわいさ余って憎さ100倍、みたいな、その証拠に夏のことばかりこうして言葉にしたくなる。
夏に愛してもらえるような、ヘルシーな美しさや、うんと自立した儚さが欲しい、
感情も動物も風景もみんなみんな輪郭を濃くしていく夏に、とびきり鮮やかでいられるような。
 
 
andymoriの「すごい速さ」が流行っているのを知ったとき、面倒な自分はまた少し夏を嫌いになりそうだったけれど、わたしのセンチメンタルのことは何にも気にせず、もっと気軽に消費してほしい。
わたしの詩のただのひとつもわたしのためにはなくて、あなたに届かなければじりじりと干からびてしまうだけのものだから、あなたに見つけてもらえたわたしは運が良い、けれど、
足りてるとは多分死ぬまで思わない、思わないことにしている、渇望だけでなんとか生きているから。

 
喉が渇く、新しく買った安い香水の甘さは夏には似合わないけれどわたしには似合うから、もう飲み干してしまいたいと思う(いつかそんな短歌も詠んだ気がする)。飲み干して、あの香りが染み込めば、夏だってわたしのことを愛してくれるかもしれない。
 
TikTokでくるくる回っているひとにもわたしの図り知らぬ彼だけの地獄がきっとあって、わたしはそれを忘れないためにインターネットをやっている。
みんなわたしよりよっぽど承認欲求と仲良くやっているから妬ましいだけだ、わたしの承認欲求も死ぬまでには懐いてくれるだろうか、
花柄の、レースの着いたキャミソール1枚で歩けないわたしのことを、世界で1番かわいいと、思ってくれるだろうか。






生活になるし、だからそのうち詩になります。ありがとうございます。