大海明日香

愛と生と性とふしぎを詩だの短歌だのにする人

大海明日香

愛と生と性とふしぎを詩だの短歌だのにする人

マガジン

  • そらをとべないぼくたちの

    雑記/エッセイ まとめ。

  • 深夜、堕落したブルーライト、ぼくら勝手に孤独になって輪廻。

    散文詩/自由詩まとめ。

最近の記事

1028個目の呪い

飽きるほど見た妄想みたいに、言いたいこと全部花になって吐いてしまえればいいのに、 その花を綺麗だねと褒めてもらえれば少しはおだやかになれるだろうか、 自分が吐く花は綺麗なはずだって、思いこむことくらいは許してほしい、 どうせ煤のように黒くたって花は綺麗だし、 わたしも同じでわたしであることをやめない限り美しいに決まっているけれど、君の目に止まらなければ意味がないだけ。 今日も欲しい花瓶は買えずにいる、わたしよりも上手に花を飾れるあの子へのプレゼントにしようかと思っている、

    • 一度も着なかった909着目のワンピース

      何だかばたばたしてみたり初めてのコロナにかかってみたり体調が戻ったと思ったらお休みを取り返すのにまたばたばたしてみたり、こうして取るに足らない文章を書くのも久しぶりになってしまいました 忙しいくらいで比較的おだやかに毎日は過ぎているのだけれど、おだやかに生きられてしまうことが、そういう自分が、腹立たしくて許せなくて泣きたくなるの、なんでだろうね。 書かなくてもいきていられるわたしになりたくないし、歌わなくてもいきていられるわたしになりたくない、 ずっと全員愛しいまんまで、だ

      • 713回目の世界の終わり

          気がついたらもう7月になっていて、毎年恒例の新潮文庫のプレミアムカバーで夏のはじまりを想ったりする。 夏が嫌いだとTwitter(Xとは呼ばないことに決めている)では何度も言っているけれど、それは夏がわたしのことをずっと好きになってくれないからで、かわいさ余って憎さ100倍、みたいな、その証拠に夏のことばかりこうして言葉にしたくなる。 夏に愛してもらえるような、ヘルシーな美しさや、うんと自立した儚さが欲しい、 感情も動物も風景もみんなみんな輪郭を濃くしていく夏に、とびきり

        • 602号室の天使の羽をちぎって奪った

          書きかけの小説の登場人物たちの生活がわたしの生活と同じようにぐるぐると回っている、わたしが言葉にしなければこのひとたちの生は誰にも伝わらないのだけど、別に誰にも伝わらなくてもわたしの世界のどこかでこのひとたちは懸命に生きていて、幸福になったりすることも知っている(わたしは結末を知っているし、結末の先でも彼らはどうせ美しく生きるから)から、 誰かに知ってもらう必要があるのか、とぼんやり思うことがある。 わたしが誰かにわたしの世界を知ってもらうために、誰かにわたしの世界の言葉の

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        • そらをとべないぼくたちの
          150本
        • 深夜、堕落したブルーライト、ぼくら勝手に孤独になって輪廻。
          208本

        記事

          ドライブ・マイ・シー

          発光したい、発行したい、発酵したい、 ビョウインには行かない、 ふくらんでいくからだを空にして、殻にして、 いのち以外のすべてを詰め込みたい。 波のように流れる胸に耳をつけると、 いつでもわたしの誕生日を祝う歌が聴こえる、 うるさい、 うるさいな、 耳をぎゅっとふさいだのは、 君以外のほとんどと手をつなぎたくないからだった。     信号が赤になったときじゃなくて、 青になったときに駄目になるんだって。 ブレーキとアクセルの違いがわからない、 ブレーキもアクセルも自分で踏み

          ドライブ・マイ・シー

          アンガーマネジメント

            終わらないで (ぜんぶ終わってしまえ)       夕暮れが嫌いなのは同族嫌悪で、カップラーメンは星になる。 3分待っても消えない怒りはこのまま一生残るのかもしれないけれど、簡単にわたしの言うことを聞くような感情はこんな世界ではどうせ生きていられない、     淘汰、 わたしを殺そうとする獣とわたしだけが適応する地獄、 眠りたくないことと起きたくないことは少しも同じじゃないのに、紺色のカーテン、 ベッドルームはいつも夜みたい、 好きなぬいぐるみだけを集めて動物園を作りた

          アンガーマネジメント

          319羽目の名前もない鳥よ

          沈みかけのままずっと漂っている船みたいな家を出てから生活が自分の腕の中にふらっとやってきてくれたような気がして、 どうか離れていかないでねと抱きしめたり世話を焼いたりしてるあいだに時間が流れていってしまうね、 最近はずっと、近頃読んでもいないのによだかの星のことばかり思い出すよ、 よだかにも、鳥たちにも、太陽にも、星にも、誰にもなれないような、誰のことも分からないような物語、 だけどきっと、どこかにわたしがいるんだろうなと思う物語、 童話を書きたかった、わたしはあなたを救えな

          319羽目の名前もない鳥よ

          あくまのこ

          心臓にまで染み込んでいる煙草の匂いが未だにどんな匂いか分からない、わたしは獣じゃない、かといって魔女でもない、 いつか魔女にあったとき、その甘い香りでそのことにきっと気づいてしまう、それがかなしい。     無花果をゆっくり食べる心臓に甘い匂いが染み込むように     指の先にまで流れている激情の炎のことを血液と言うのなら、わたしはやっぱり悪魔の子なのかもしれなかった、それならそのほうがずっとよかった。 あのひとは魂ごと差し出してもなにも叶えてくれない、ならせめて、わたしと

          ひとりとひとりのふたりぐらし

          いっちょ前に健やかなふりをして白湯を飲むところから1日は始まる、 100円ショップで100円じゃなかったキラキラのマグカップは大きさもちょうど良くて、レンジに入れても大丈夫だから気に入っている。 イチゴ柄のパジャマを引きずったままねだると、こいびとが食べていたピーナツクリームのコッペパンを3分の1くらいちぎって渡してくれた。 やわらかい甘さが心地いい、このあいだ食べた紅茶味のフレンチトースト、おいしかったな。また買いにいこう。 ぼーっと考え事ばかりしているから、カフェオレに

          ひとりとひとりのふたりぐらし

          生まれ変わったらバンドを組もう

            電波が悪くて時々 ギタリストが演奏を止める サブスクってビスケットみたいで 美味しそう 軽くて あたしも月500円 払ってくれるひとがいれば それなりの愛をあげるのに それなりの生活で それなりに生きていくのに それなりに足りる愛を     穴の空いたバケツを テープで止める日々に 嫌気がさしたら バケツをかぶって歌いたい 反響する自分の声だけ聞いてたら 今日はよく眠れる気がする 魔法陣をいくつ描いても 喚べない悪魔の名前を忘れたい     生まれ変わったらバンドを組

          生まれ変わったらバンドを組もう

          0205個目のセーブポイント

          雪が降ってるね、降るたびに言ってるけどさ、雪が降ることをもう喜べなくなって哀しいね。 でも雪がとけたら春が来るって、それだけはずっと忘れないでいたいね、 別に好きじゃない春、特別じゃない春、わたしのものにならない春が。     上手に話もできないのに、上手に書くこともできなかったら、上手に詩にしてしまえなかったら、わたしの胸のなかの水はそのうち淀んで濁って生き物の住めない場所になってしまうんじゃないかと怖くなる。 天気が良くないと大抵調子も良くなくて、自分の機嫌をとるために

          0205個目のセーブポイント

          思い出せない花の蜜の味

            ひらく   とじる   心臓のあまいかおりがする 血液のにがいかおりがする   記憶は血管を流れるから 怪我をするたび さらさら滲み出ていく どうでもいいことから順番に どうでもいいことは わたしのことがどうでもよくて 忘れたいことは わたしのことをくるしめたいから わたしが記憶をしまうとき 罰として 窓のない部屋に放り込んだから       ひらく   とじる       心臓は 帰り道に千切ったはなびらに似ている 花占いをはじめたひとは きっとその日 いやなことが

          思い出せない花の蜜の味

          1月18日の承認欲求

          自分の声を嫌いになりそうだったら朗読をしたり歌をうたってみたりするし、自分のへたくそな字を嫌いだから手書きで自己顕示欲を満たしてみたりする、 反骨精神の塊みたいな性分とは反対にこころもからだもぽんこつのがらくたみたいな造りになっちゃって、でもわたしは精工で完璧で傷ひとつない高級なおもちゃよりぽんこつのがらくたみたいなおもちゃが好きだよ、 今日も信号は自分の前でばかり点滅するような気がするし、靴擦れした足はまだぜんぜん痛いけど、 だいじょうぶ、お洒落な美容室で髪を切ったり、

          1月18日の承認欲求

          雪解け水のシロップ

            幸福の重さを上手に測れない 体重計は壊れていてほしい はじめていくカフェの小さなテーブルに飾られた もっと小さなシェットランドシープドッグに 知らない街の写真を見せて ここが故郷なのと ずっと嘘の話がしたい     (冬になるとあたりいちめん雪が降って それが溶けるまでわたしたちは眠るんだよ)     淡い異国の街で産まれたことになって 優しいだけのホットケーキを食べる 毎日こうしていれば シロップ漬けのくだものみたいに こころまで柔らかくなれるだろうか 柔らかいままでい

          雪解け水のシロップ

          -1212℃の体育館で

          すれ違った高校生から嗅いだことのある香水の匂いがした、 わたしも文化祭でバンドを組んで歌いたかった、100人に1人くらいは知ってるような曲を歌って、イントロが鳴った瞬間に顔を上げた数人のひとのこと、仲良くはならないまま特別にしたかった、 特別だと思ってほしかった。 わたしのしたかったは全部、後悔でも憧憬でもなくて渇望です、 冬の空気に触れた肌の感想なんかよりずっと、ずっと、喉が乾いています。     最近は年明けのお引っ越しのためになんとか生活をしています、 荷造りは全然進ん

          -1212℃の体育館で

          どれだけ泣いても海はできません

          突然、わけのわからないことで死んでしまう以外に、あたしがきみを泣かせる方法なんてあるの。     きみが死ぬことをかなしむために生きているのではなくてあたしが死ぬことをきみにかなしんでほしいから生きているだけだって、気づいてしまった日の海が穏やかに凪いでいる。  本物の灯台を見たことがないってこと、誰にも言えないまま皮膚はゆっくりと乾いていく。 それなのにお腹の中の海にぽつんと建った灯台はやけに鮮烈なんだねって、 唯一のきみにそう言われるためだけに内緒にしている、別に誰に知ら

          どれだけ泣いても海はできません