1028個目の呪い
飽きるほど見た妄想みたいに、言いたいこと全部花になって吐いてしまえればいいのに、
その花を綺麗だねと褒めてもらえれば少しはおだやかになれるだろうか、
自分が吐く花は綺麗なはずだって、思いこむことくらいは許してほしい、
どうせ煤のように黒くたって花は綺麗だし、
わたしも同じでわたしであることをやめない限り美しいに決まっているけれど、君の目に止まらなければ意味がないだけ。
今日も欲しい花瓶は買えずにいる、わたしよりも上手に花を飾れるあの子へのプレゼントにしようかと思っている、
寂しさも哀しさも激しさも好きだけれど、みじめな気持ちになるのがいちばんこわい、
それだけは詩にできないかもしれない。
幸福も地獄もわたしのものだから誰にも触らないでほしい、だれかの地獄の上澄みだけ覗いて君の泉は浅いねと知った気になるほど愚かで腹立たしいことはない、
何を書きたいのか今日もわからない、
航海日誌みたいにエッセイを書きたいのに海へ出るのは毎日億劫で、美しい女が王子様を待つだけのおとぎ話は嫌いだったのに、わたしを海へ連れ出してほしいとさめざめ泣いてみたい時がある、
わたしであることをやめたくない、
そうじゃなきゃ、わたしでさえわたしを愛せないから。
捗らない仕事と進まない小説のためにパソコンの前に座っているだけで10月が終わってしまう、
歳を重ねることは呪いを解いていくことだと思っていたけれど、実際には解けない呪いと付き合っていくためにどうにかやるしかなくなるだけで、むしろ拙い魔法でごまかしていた小さな呪いが増えていくみたいな気がする。
穴の開いたバケツは日を追うごとに自我を持ってわたしを乗っ取ろうとするから、四六時中お腹がすいているような気がするのはきっとそのせいだね、
重力に逆らえずに下を向くまつげにパーマをかけるために予約をとった、
今日も、ちゃんと何かを成し遂げた気になりたかっただけ。
生活になるし、だからそのうち詩になります。ありがとうございます。