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深夜、堕落したブルーライト、ぼくら勝手に孤独になって輪廻。

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散文詩/自由詩まとめ。
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#海

ドライブ・マイ・シー

発光したい、発行したい、発酵したい、
ビョウインには行かない、
ふくらんでいくからだを空にして、殻にして、
いのち以外のすべてを詰め込みたい。
波のように流れる胸に耳をつけると、
いつでもわたしの誕生日を祝う歌が聴こえる、
うるさい、
うるさいな、
耳をぎゅっとふさいだのは、
君以外のほとんどと手をつなぎたくないからだった。
 
 
信号が赤になったときじゃなくて、
青になったときに駄目になるんだ

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どれだけ泣いても海はできません

突然、わけのわからないことで死んでしまう以外に、あたしがきみを泣かせる方法なんてあるの。
 
 
きみが死ぬことをかなしむために生きているのではなくてあたしが死ぬことをきみにかなしんでほしいから生きているだけだって、気づいてしまった日の海が穏やかに凪いでいる。 
本物の灯台を見たことがないってこと、誰にも言えないまま皮膚はゆっくりと乾いていく。
それなのにお腹の中の海にぽつんと建った灯台はやけに鮮

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死はさざなみのように

幸福は海で絶望は宇宙
孤独は魚みたいに幸福の中を泳いでいて
わたしは時折すべてを休んで
幼馴染の死神と海や星を見に行くためのドライブをする
それまであったことはみんな歌にして
死神だけがそれを聴いてくれる
死神だけがいつも
わたしに歌手になったらいいと言ってくれる
死神だけがいつも
わたしに期待して
わたしに失望もせず
わたしのそばを離れない
絶望は海で幸福は宇宙
愛情は干上がったくらげ

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海が歌うからわたしは

 
歌にしないとやってらんないことばっかり詩にして、
そのくせ踊りださないようにって座らせる、いちばんきれいな服を着せて、いちばん綺麗な椅子に、いちばんかわいいポーズで。
サニー、わたし音楽の鳴る部屋にいられなかった日のことを覚えてるの、だから歌いたいの、歌いたいの、だから、ぜったいに、歌えないの。
 
 
リーブ・ミー・アローン
ぬいぐるみになれって
言われてみたかった
言われないのにぬいぐるみ

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春の鱗

わたしが人魚だったら、
春、
はがれた鱗を拾ってくれるひとをきっと好きになるのに。

海は誰の味方もしないから喧嘩をしたときには行きたくなくて、そんなときにまで自分がひとときも人魚でなかったのとを思い出して嫌になる。
一面に落ちた桜の花びら、鱗みたいね、さくら色の人魚の、はがれた鱗みたい、
なんにんの人魚が恋にころされたのだろう、それとも、これは、恋にぜんぶを預けて陸へあがった人魚たちが、羽化した

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しづかに哭けよと海は言う

さみしいときはいっとうさみしいお水をのんで
からだをどんどん重たくして
お風呂にはいるみたいに自然に
海にからだをつけることにする
いっとうさみしい歌をうたう
ちいさな
さめ
が居まして
彼のうたう子守唄で
海の底でねむらなければならないので

(つまらないことに人魚でなくてよかったと思う、そのうち息がくるしくなって、わがままに海からあがるのだ、風船の空気がしゅうと抜けていくみたいに、これは仕方な

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グッナイ・マイ・サマー

グッナイ・マイ・サマー

 海がひかる、
 ナツの棲む、とおく淡い海が。
 
 

 
 茹だるような暑さにうなされるたび見知らぬ海辺のまちの夢を見る、街灯のひとつさえないくせに、やけに明るい、けれど、いつだって夜のまち。明るいのは星がみんな落ちてきたみたいに、ううんもっと、一晩中、水面で花火が咲いているみたいに、海が光っているからだった。
 そのまちでのぼくはうんと自由で、清潔な木製の家を出て、ちいさな市場で蒼いりんごを

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グッナイ・エンヴィー

夢のなかできみいがいのひとに恋をしました、おだやかでない恋でした、だからどうということはなく、目覚ましがなる前に目を覚ましていつもよりぬるいコーヒーを飲むのでした。
きみに贈ったもののうち、いちばん軽いものといちばん重たいものを思い出しています、
たぶん、どちらも、ぼくの身体なのだと思います。

ぼくはきみに不自由にしてほしかっただけで、ぼく自身の手で不自由になりたかったんでないのにな、と、思いな

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魚のしっぽは不等号

目を見て話しなさいと叱られたときから誰の目も見れなくなって、 昼夜、波の音ばかりが聴こえている。海のちかくで暮らしてみたかった、(ほんとうはどこだって良かった)、魚だったのかもしれないと、小さな小さな蟹にだけ相談したかった、潮風を吸って、吐いて、呼吸する、蟹は波にさらわれていく。どこででも、生きにくいと絶望を抱きしめることは、どこででも、生きていけるほど絶望とうまくやれるってことだ。
すこしだけ眠

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思いだしてシザーズ・モンスター

 
ベッドに髪がながれるたびに架空の海に焦がれている、両手のひとさしゆびを合わせて、ゆっくりと腕をひろげて離していく、距離をはかっている、世界と自分との距離、君とわたしとの距離、わたしと、架空のわたしとの距離。
 
 
そこらじゅうに透明の点線を描いてまわる、おおきな、おおきなはさみがいつか地球をおそいに来たとき、切るところを迷わないように。わたしはどこから切られてしまおう、きみに選んでもらおう、

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インスタント・ブルーのしじまで

 
キッチンは海で、たまねぎを刻んでいるあいだわたしは人魚だったのに、鍋の中をのぞいたとたん人間にもどってしまう。
蛇口を通ってきた魚たちはざわざわと謝罪と感謝をくりかえし伝えあっていて、そう、そういうのがやわらかな波になるのよ、と、母のような眼差しでおもうたび、包丁の色が淡くなるような気がした、
ゆるし、かしら。ひとりでおままごとを繰り返したあの子は泳げなかったし、泳ぎ方を、教えてもらったことが

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ぼくたちはこうかいしている

ぼくたちはこうかいしている

 
アルバムをめくると潮のにおいがするもう捨てた服の夢ばかり見る

いちどだけ狼煙がわりに吸う煙草ひかる年確ボタンを押した

選択のひとつにいつも海がいてぜんぶ捨ててもいいよと笑う

君のせいだよと泣いたのに出立の朝も変わらず君は凪いでる

ぼくたちはぼくたちの舟で海をゆく船舶免許ももたないままで
 
 
 
 
もう着ないセーラー服、捨てずにしまいこんだことが、なんの感傷にも未来

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ぼくも陸では半透明で

 
 

さよならクラゲ
ぼくはもう海を出るし
もうにどと海を
泳ぐことはないだろう
ある日落ちてきたひかる破片に
からだが映って
気づいてしまったのだ
ぼくはひとだった

にほんあしで歩くようになって
おおきな水槽を買った
ちいさな魚を飼って
不自由と自由をしりたかった
不自由とはぼくのからだで
自由とはきみのからだだと
妬んでやまなかった
じぶんの愚かさをしりたかった
そうしていつか

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かみさまはかわりばんこにねむる

 
まち
ねむるあいだ
空から海が落ちて
まち
ねむるあいだ
沈んでいるのです
ねむらないぼくたちはそのあいだ
さかなになって
あしを捨てて こえを捨てて
吐きだすあぶくの
おおきさだけで会話をするのです

明け方
潮は引いて
アオからアオへ
まちはなにごともなく
海へ一礼をして
ぼくたちはなにごともなく
ひれをあしに変えて
しゃがれたこえを拾う

まち
ねぼけまなこの
置いていかれたくじ

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