思いだしてシザーズ・モンスター
ベッドに髪がながれるたびに架空の海に焦がれている、両手のひとさしゆびを合わせて、ゆっくりと腕をひろげて離していく、距離をはかっている、世界と自分との距離、君とわたしとの距離、わたしと、架空のわたしとの距離。
そこらじゅうに透明の点線を描いてまわる、おおきな、おおきなはさみがいつか地球をおそいに来たとき、切るところを迷わないように。わたしはどこから切られてしまおう、きみに選んでもらおう、いちばんうつくしいところを知っているのは君のような気がする、それとも、ただ君といるときにしかわたしのかたちが、整わないだけかもしれない。
目に見えないものだけはそのかたちを失わずにいられるから羨ましくて、手を合わせるとき、わたしが星の名前を知らないこととか、恐竜を見たことがないとか、そんな神聖さ。
そうですねきみにとって、わたしが架空であればいいのにと思います、でもそう思うたび、そのゆびがゆらゆらと架空の、理想の、うつくしいわたしだけに触れるのを見なければならないと思うとどうしようもなく苛立って、
あぁ、おおきな、おおきなはさみの怪物にでもなってしまいそう、君と見たあの海を都合よく点線で切りとって、架空の海に失望してしまいそう。
生活になるし、だからそのうち詩になります。ありがとうございます。