女性芸能の源流―傀儡子・曲舞・白拍子 (角川選書)
簡単に言えば、「日本の中世に生きた女性」を解説した本です。
ただし、その女性は、普通の女性ではありません。歌や踊りといった、芸能をなりわいとする女性です。
芸能の中には、シャーマニズムも入ります。いわゆる巫女【みこ】の術ですね。
古代から中世にかけて、芸能とシャーマニズムには、強い関連がありました。
中世の芸能の職業で、最も知られているのは、白拍子【しらびょうし】でしょう。
源義経【みなもとのよしつね】の愛人、静御前【しずかごぜん】が、白拍子でした。
白拍子とは、歌舞を専門とする女芸人です。「頭に烏帽子【えぼし】をかぶり、腰には刀を差す」という男装で、歌い舞ったといいます。
平安時代から、「男装の麗人」は、実在しました(^^)
白拍子以外にも、中世日本には、大勢の女芸人がいました。
例えば、傀儡女【くぐつめ】です。傀儡【くぐつ】と呼ばれる、あやつり人形を使う女性たちでした。
曲舞女【くせまいめ】という女性たちもいました。曲舞【くせまい】という、舞の一種を専門とした女性です。
「語り」を職業とする女性たちもいました。有名なのは、瞽女【ごぜ】ですね。
単純に、春を売る遊女【あそびめ】たちもいましたし、前述の巫女もいました。
他にも、熊野比丘尼【くまのびくに】、桂女【かつらめ】など、中世日本は、女芸人の宝庫でした。
けれども、その実態は、ほとんど知られていません。
この本は、その貴重な資料です。
以下に、この本の目次を書いておきますね。
はじめに
第一章 巫女【みこ】――神への舞
一 打臥【うちふし】の巫女
二 『梁塵秘抄【りょうじんひしょう】』に謡われた巫女
三 熊野の巫女
四 熊野比丘尼【くまのびくに】
五 貴船【きぶね】の巫女
六 祇園【ぎおん】社の巫女
七 物憑【ものつき】巫女
八 湯立ての巫女
九 歩き巫女
十 町々村々の巫女座【みこざ】
第二章 傀儡女【くぐつめ】
一 『更級日記【さらしなにっき】』の足柄山の遊女の歌
二 美濃青墓【みのあおはか】の傀儡女たち
三 大曲【たいきょく】足柄
四 『傀儡子記【くぐつき】』の傀儡子【くぐつ】
五 宇津谷峠【うつのやとうげ】の傀儡女
六 神祭りの傀儡
七 桂女【かつらめ】
第三章 遊女【あそびめ】
一 『遊女記【ゆうじょのき】』の遊女
二 江口・神崎の遊女
三 「往生伝」の遊女
四 勅撰集【ちょくせんしゅう】に入った遊女たち
五 江口君妙【えぐちのきみ たえ】と西行
六 親王・内親王・貴人の母たち
七 能楽「班女【はんじょ】」から狂言「花子【はなご】」「隅田川」へ
第四章 白拍子女【しらびょうしめ】
一 静御前と祇王【ぎおう】・祇女【ぎじょ】
二 美濃青墓の白拍子売買状
三 白拍子と乱拍子
四 男装の白拍子舞女
五 伊賀局亀菊【いがのつぼね かめぎく】
六 歩き白拍子
第五章 曲舞女【くせまいめ】
一 百万山姥【ひゃくまやまうば】の曲舞
二 曲舞の名手百万
三 百万の芸態
四 曲舞座の人々
五 その後の曲舞
第六章 瞽女【ごぜ】と女芸人たち
一 『曾我物語』を語る瞽女
二 鳥追女【とりおいおんな】・鳥追風俗
三 女猿楽
終わりにかえて――出雲の阿国【おくに】の登場
あとがき
主要参考文献