#時代小説
短編小説『歴史に名を残せた人の真実、残せなかった人の理由』
齊藤一は京の南のはずれにある不動堂村の新選組の屯所に着いた。
陽はすっかり暮れてしまっている。
移転してからまだ日が経っていない。
香ばしい木の香りが漂っている。
大名御殿と遜色のない立派な造り。
齊藤はこの屯所に駐在したことはない。
この屯所に移る前、西本願寺に間借りしている時に御陵衛士の一員として高台寺へ移った。
だからこの屯所には馴染みはない。
どこか余所余所しい感じがする。
時代小説『龍馬、その傷を見よ!』
「先生、伊東甲子太郎様の配下の御陵衛士と名乗るお武家様が、御用改めに来られております」
元相撲取りで用心棒の藤吉が二階に上がってきて告げた。
「俺に会いに来たのか」
「いや、中岡先生をお探しに来られたと察します」
坂本龍馬と中岡慎太郎、顔を見合わせる。
「何人だ」
「お二人です」
「分かった。俺が応対する。通せ」
火鉢を挟んで北側の床の間の前に龍馬が座り、南側に慎太郎が座っていた。
短編小説『藤堂平助、御用改めでござる』
坂本龍馬の用心棒、藤吉は藤堂平助と服部武雄の脇差の下げ緒を確認する。
座敷に案内する際、容易に刀を抜かれて斬りかかられると困る。しっかりと巻かれていて抜けない状態なのか確認するのである。
「失礼いたしました」
そのあたり場数を踏んでいる元新選組の隊士だけあって抜け目がない。
しっかりと巻いている。
が、しかし、それは見た目だけなのだ。
「永倉巻き」
新選組の隊士が呼ぶ「永倉巻き」これ