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毎日ちょっとだけ連載小説|水深800メートルのシューベルト

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連載で小説を始めてみました。一話をかなり短く(200文字くらい)毎日ほんの少しずつ進める予定です。 読んで頂けると嬉しいです。
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2024年9月の記事一覧

水深800メートルのシューベルト|第1050話

 ソナーマンのタイロンと通路ですれ違った時に、水面の艦艇について訊いたが、彼は首を振った…

吉村うにうに
4か月前
6

水深800メートルのシューベルト|第1049話

 状況を知りたいというのは、僕だけではなくロバートやドビー兵曹長といった水兵や下士官達も…

吉村うにうに
5か月前
7

水深800メートルのシューベルト|第1048話

 寝台室のハッチの前で、ロバートと別れ際に、彼は欠伸をしながら言った。 「やっと少しは眠…

吉村うにうに
5か月前
11

水深800メートルのシューベルト|第1047話

 ロバートは二人が居なくなると、陽気な声で話しかけてきた。 「な? 行き当たりばったりの…

吉村うにうに
5か月前
5

水深800メートルのシューベルト|第1046話

「技術上話せない事もあるが、これは言ってもいいかな。ちょっとしたトラブルがあって浮上した…

吉村うにうに
5か月前
9

水深800メートルのシューベルト|第1045話

 彼は、ここでしっかりと否定しておかないと、水兵達が反乱を起こすかもしれないと考えている…

吉村うにうに
5か月前
5

水深800メートルのシューベルト|第1044話

「原子炉が止まったのは本当でしょうか?」  ロバートがおずおずと尋ねた。その時、迷っているようだった大佐の心は決まったように見えた。 「止まったが、すぐに復旧して臨界に戻る。君達はそんな心配をしなくていい」  艦長は鼓舞するように言った。 「あ、あの、着底したようですが」  僕が思い切って尋ねると、カールトン大佐の顔色が変わった。 「沈没ではないですよね?」 「断じてない。一時的な措置だ。システムチェックはこれからだが、それさえ終われば、全ては元に戻る。誰かね、変な噂を流

水深800メートルのシューベルト|第1043話

「すぐに追い払います」  それを聞いて艦長はロバートの方へ首を巡らせた。ロバートはという…

吉村うにうに
5か月前
7

水深800メートルのシューベルト|第1042話

「ちぇ、命令ですか」  ロバートの皮肉っぽい言い方が合図になったように、再びハッチが開き…

吉村うにうに
5か月前
4

水深800メートルのシューベルト|第1041話

「お前、気が小さいなあ。こんな深海で怯えても仕方ないだろう。敵の攻撃じゃねえよ。きっと大…

吉村うにうに
5か月前
6

水深800メートルのシューベルト|第1040話

「心配するな、さっきのエンジニア捕まえて訊いたら、そう答えやがったんだよ。今はバッテリー…

吉村うにうに
5か月前
5

水深800メートルのシューベルト|第1039話

 前の方で壁にしがみついていたロバートは、ノーマン中尉に続いた男のひとりの袖を引き、何か…

吉村うにうに
5か月前
7

水深800メートルのシューベルト|第1038話

 人影の先頭とぶつかった。 「おおっと、いたのか。すまない」 「いえ、失礼しました」  反…

吉村うにうに
5か月前
2

水深800メートルのシューベルト|第1037話

「アシェル・スコット、怪我はないか?」  後ろから、ワッセルマン上級兵曹長の心配するような声が聞こえてきた。振り向くと、闇の中で、彼の姿がぼんやりと見えたが、表情ははっきりしない。  艦内が静けさを取り戻すと、僕は息を大きく吐いた。どこかに着底したんだ。そのショックで電気が落ちたのか? 途方もなく長い間、周囲が闇に包まれていたような気がした。艦内の停電は初めてだし、聞いたこともない。不安が体の毛穴から侵入してくるような感覚があった。  しばらくすると、重々しい音を立ててハ