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水深800メートルのシューベルト|第1037話
「アシェル・スコット、怪我はないか?」
後ろから、ワッセルマン上級兵曹長の心配するような声が聞こえてきた。振り向くと、闇の中で、彼の姿がぼんやりと見えたが、表情ははっきりしない。
艦内が静けさを取り戻すと、僕は息を大きく吐いた。どこかに着底したんだ。そのショックで電気が落ちたのか? 途方もなく長い間、周囲が闇に包まれていたような気がした。艦内の停電は初めてだし、聞いたこともない。不安が体の毛穴から侵入してくるような感覚があった。
しばらくすると、重々しい音を立ててハッチが開き、黒い人影が数人、そこから出て来た。同時にパッと電気が点いて通路が明るくなった。最初の一二秒は電気が消えたり、明るくなったりを繰り返していたが、やがて安定して元の世界を構成し直していた。