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水深800メートルのシューベルト|第1046話
「技術上話せない事もあるが、これは言ってもいいかな。ちょっとしたトラブルがあって浮上した方が安全なのだが……、上に船舶があるとソナーからの報告があったのだよ。それはどこかの艦艇かもしれないし、民間の船舶かもしれない。ただ、事前の識別情報にはなかった船だからね。だから、メインタンクブロー(注:タンクから海水を排出して浮上する事)を中止して潜航に戻ったんだよ」
「中国の船ですかね?」
ロバートがおもねるように尋ねた。艦長は首を傾げた。
「わからん。だが、浮上するわけにはいかないからな」
そう言うと艦長と副官は僕らの間を通ろうとしたので、僕らは壁に体をぴったりと押しつけて道を開けた。きっと、原子炉の様子を見に行くのだろう。