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毎日ちょっとだけ連載小説|水深800メートルのシューベルト

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連載で小説を始めてみました。一話をかなり短く(200文字くらい)毎日ほんの少しずつ進める予定です。 読んで頂けると嬉しいです。
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2024年8月の記事一覧

水深800メートルのシューベルト|第1020話

 ボブは顔をしかめて周囲を見回してから言った。 「そう簡単に拾えるわけないだろう。あまり…

吉村うにうに
5か月前
8

水深800メートルのシューベルト|第1019話

「お前病んでいるじゃないか? ゲイル先生に薬を処方してもらえよ。そのうちに幻聴が聞こえる…

吉村うにうに
6か月前
7

水深800メートルのシューベルト|第1018話

「で、そのピアノが手放せないのは同じなんだな。持っているだけで弾けないのにな」 「弾くよ…

吉村うにうに
6か月前
5

水深800メートルのシューベルト|第1017話

 ロバートの目は疲れ切っていて、ショボショボと瞬きをしていた。 「ガキの頃の毛布が手放せ…

吉村うにうに
6か月前
10

水深800メートルのシューベルト|第1016話

「いやあ、電子ピアノの調子外れの大きな音が聞こえてきて驚いたよ」  ボブが眼鏡を上げなが…

吉村うにうに
6か月前
6

水深800メートルのシューベルト|第1015話

「休憩時間中にイヤホンをする気になれるなんて羨ましいよ」  ソナーマンは勤務中、敵艦の音…

吉村うにうに
6か月前
9

水深800メートルのシューベルト|第1014話

 もう少しで、十八時の僕の勤務が始まる。しかし、光が差し込まないので、時計の数字は勤務の開始と明けを意味するに過ぎない。彼は辛そうに皿を見ながら告解しているような顔をしたが、ここでの不眠は珍しくないので、彼の言葉に特段驚かなかった。 「ゲームをしているからだよ。あの光は脳を刺激して眠りにくくするんだ」  いつかゲイル先生に教わった話をした。彼は目をちらっと上げて、僕を見たが何も言わなかった。すると、目の前にいたソナーマンのうち、若いが頭のてっぺんの毛髪が少し薄く目尻の垂れ下

水深800メートルのシューベルト|第1013話

「お前、ベッドを見つけられたか?」 「いや、誰が使用しているのかわからないから、魚雷格納…

吉村うにうに
6か月前
8

水深800メートルのシューベルト|第1012話

僕は厨房の手前に行くと、トレーに皿とフォークを載せ、トマトやレーズン、それに仔羊の肉とい…

吉村うにうに
6か月前
7

水深800メートルのシューベルト|第1011話

 少し不安だからといって、あれを飲んでいたら、眠くて仕方がない。あの手の薬はリラックスで…

吉村うにうに
6か月前
6

水深800メートルのシューベルト|第1010話

 寝心地はやはり最悪だった。背中に痛みを感じる度に、ロバートを恨めしく思った。うとうと眠…

吉村うにうに
6か月前
5

水深800メートルのシューベルト|第1009話

 こんな時の都合の良い場所として存在する下層の格納庫には、二三の寝床にありつけなかった乗…

吉村うにうに
6か月前
8

水深800メートルのシューベルト|第1008話

     (49)   体を鎮めるような眠気と意識の揺り戻しの間で無限の間揺れ動いていた…

吉村うにうに
6か月前
7

水深800メートルのシューベルト|第1007話

     (49)   体を鎮めるような眠気と意識の揺り戻しの間で無限の間揺れ動いていた。緑の魚雷格納庫の隙間に毛布を敷いて寝たのが間違いだとわかっていた。 僕のベッドを共有しているロバートが、イヤホンを耳に携帯ゲームをしていて、動こうともしなかったのだ。彼の目に入るように近づいてもだ。彼は眉を吊り上げ、下から睨むようにして、イヤホンを片方だけ外して言った。 「ベッドは探せば空きがあるんだから、他で寝ろよ」  彼の勤務は始まりが近いはずだが、動こうとはしなかった。後三十分