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水深800メートルのシューベルト|第1016話
「いやあ、電子ピアノの調子外れの大きな音が聞こえてきて驚いたよ」
ボブが眼鏡を上げながら言った。
「すまない。音量スイッチが最大になっていた上に、直後に消そうとして自動演奏を間違って押したんだ」
「あれが自動演奏? だったらメーカーを訴えないとな」
タイロンが笑いながら言った。
「まさか、今回のあのおもちゃを持ち込んでないだろうな」
ボブが、ジロッと僕を見て訊いた。
「持って来ているよ。でも、バッテリーは外しているから問題ない。子ども向けのピアノだから、イヤホンを取りつけられるタイプじゃないからね」
そう言うと、ロバートが口を挟んできた。
「音も出せないピアノって意味があるのか? それでも持ち歩くってまるで依存だな。俺様がゲームをついやっちまうのと同じだな」