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【節水便器 開発秘話①】 30年前の“3分の1以下”で流せる理由――進化が加速した1990年代

この30年間でインターネットが普及したり、ポケベルから携帯電話、そしてスマートフォンへと世の中は大きく変化しています。トイレにおいても、温水洗浄便座(TOTOの商品名は「ウォシュレット®」)の普及で「おしりを洗う」ことが当たり前となりましたが、便座の下の「便器」も、この30年間で大きく進化していることをご存知でしょうか? 皆さんが毎日使っている便器の多くは、お皿やお茶碗と同じ“陶器”、つまりセラミックスの仲間です。トイレを流すのに30年前は1回あたり13リットル(※1)の水

ノア・スミス「自由民主主義はこんな風に21世紀を失うかもしれない」(2024年5月22日)

情報と自由に関するちょっとゾッとするささやかな理論 自由主義が勝利の凱歌をあげている時代に,ぼくは育った.自由民主主義が勝利して,20世紀をわがものにした――帝国主義もファシズムも共産主義もみんな崩壊して,20世紀末には,アメリカとアジア・欧州の民主主義同盟国が経済面でも軍事面でも上り調子だった.中国ですら,依然として独裁国家ではありつつも,この時期に経済と社会の一部を自由化した.フランシス・フクヤマの『歴史の終わり』に鼻白んだ学者たちも,総じて,資本主義および/あるいは自

日本政府はなぜ円安を放置しているように見えるのか?

4月末に一時1ドル160円を超える円安ドル高を記録し、インフレを調整した実質実効レートで見る日本円の価値は1ドル360円の固定相場だった1971年のニクソンショック直前を10%近く下回りました。為替の影響によるインフレも進んでおり、マスコミや一般人の間でも日本政府の無策を批判する声が増えてきています。プロのエコノミストの中にも「日本政府はあえて円安に誘導している」と考えている人もいます。しかし私から見ると、政策サイドとマスコミや一般人、エコノミストの間には大きな誤解が生じてい

1+1=2はどこから来たの?謎の演算を考える

「なんで1+1=2なの?」とか「1+1=2の証明は難しいらしい」みたいなやつはよく言われることで、数学と縁遠い人でも一度は聞いたことがある/疑問に思ったことがあるかもしれません。 今回はそんな疑問に直接答える話、というわけではありませんが、「1+1=2」というそれそのものについて興味深い示唆を与える話を紹介しましょう。 謎の演算「◯」 自然数に対して定義される、なんだかわからない謎の演算「◯」を新たに考えてみます。記号は適当であり、何でもいいです。 つまり、「1+1」や

ウイスキーの保管にはパラフィルムもガスも使わない

ワシじゃ!  今日はウイスキーの保管についての話じゃ! 「ウイスキーはどれぐらい日持ちしますか?」という質問は、誰もが知りたい、常にホットなトピックじゃ。 なにしろ、ウイスキーは酩酊や喉越しを目的にゴクゴク飲むような酒ではない嗜好品なので、あまり量を飲まない人間は、一晩ワンショットで充分だったりするからじゃ。そうなると、ボトルは飲みきらず長期間にわたって手元に存在する事もザラじゃろう。 幸いなことに、蒸留酒であるウイスキーは、ワインのように「開栓したら酸化してしまうの

世間のスニーカーブームがいきなり終わってしまったのですが

スニーカーに熱狂した日々の終わり2023年、驚くべきことにスニーカーブームが終わってしまった。本当に終わったのだ。これはなにも「私自身がスニーカーに飽きてしまった」「マイブーム終了」という意味ではない。世間的に、そして何人かの識者の意見によればおそらく全世界的に、あれほど熱狂的だったスニーカーブームがいきなり終焉してしまったのである*1。店頭には買い手のない製品が積まれ、メーカーはセールを連発し、ショップは次々に閉店し、新製品を買うための行列はなくなった。スニーカーショップ「

「刺身にわさび」はいつからか?

 和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたのは、2013年12月4日。世界に知られるようになった和食、ことに寿司や刺身には、わさびの存在が欠かせない。しかし、日本人はどれほどわさびのことを知っているのだろうか。  唐辛子であれば、かつて椎名誠さんも高く評価した『トウガラシの文化誌 』(アマール ナージ/晶文社)が思い浮かぶし、他にも唐辛子の文化史を巡る本は何冊かある。しかし、わさびに関してはどうだろうか? 学術的にまとまった本はあるのだが、一般的な読み物としては思いのほか見当

マリオのUIがフラットデザインになった日を知っているか 〜 【視伝研】UIデザインの歴史を紐解く

今回の視伝研テーマは【UIデザインの歴史を紐解く】です。 年表形式でUIデザインの歴史を作りながらメンバーと意見を交換しました。PCやスマートフォンのOSのUIはもちろん、乗り物の操縦桿やSNSのデザインなど、さまざまな観点で資料を集めてみました。 そこで、元ゲーム屋の性として、個人的に楽しくなってしまうのはやっぱりゲームUIの歴史なのですが… なんか、ゲームのUIってこんなイメージありませんか。 もちろんこういうのを作れることは大事なんだけど、「ゲームでよくあるやつ」以

<前編>知ってた?浮世絵にちょっと詳しくなれるトリビア。墨一色から始まり極彩色な浮世絵ができるまで。

江戸の大衆文化の中で花開いた絵画、浮世絵。 実はわたしたちの日常で使う「見当をつける」という言葉が、浮世絵を制作する際に使用する印が由来になっていることや、浮世絵がその時代のトレンドを写していたことをご存知でしょうか? 今回は、そんな浮世絵に少し詳しくなれる、ちょっとためになるトリビアを前後編に分けてお伝えします。浮世絵の見方が変わったり、浮世絵がちょっと身近になるかもしれません! 前編となるこの記事では、私たちが思い浮かべる色鮮やかな浮世絵が制作されるまでの紆余曲折や

どこまでも「オルタナティブ」なスプラトゥーン音楽史その1

こんにちは、もそししです。 今日はSplatoonシリーズを彩る数々のBGM、その中でもとりわけバトルを盛り上げるBGMについて、その歴史と変遷を皆さんに紹介したいと思います。 オルタナティブとは?まず紹介の前に、タイトルにもある「オルタナティブ」という単語についてですが 音楽ジャンルにおける「オルタナティブ」は流行りを表す「メインストリーム」の対義語的な位置付けで、現状の主流に対する形で新たなジャンルや要素を付加した音楽の事を指します。 これがどのようにスプラトゥーン

銃に詳しくない人向け図・解説等まとめ

twitterやprivatterに投稿していたものをまとめました 思いついた時に加筆・増補・編集してます リンク切れやサムネが表示されない動画も適宜入れ替えたりしています 「創作で銃を出したい(出す必要がある)が具体的にどのような銃を出せばいいのか、どう描けばいいか分からない」という層向けに、ひとつの切っ掛けや取っ掛かりになれば、という意図で書いたものです。  性質上、内容が重複したりして少し冗長になっている部分があります。 (また、全ての銃器を網羅することを目的としたも

北斎は「画狂老人卍」というやんちゃな画号をどのようにして思い付いたのかという話

葛飾北斎が生涯に何度も画号を変えたという話は有名ですが、たくさんある画号の中でも、特に異彩を放っているのが「画狂老人卍」ではないでしょうか。しかもこの画号、北斎が70代半ばというかなりの高齢になってから使い始めたものです。ちょっと中二病を思わせるようなやんちゃな画号。北斎はなぜこのような画号を用いるようになったのか、その経緯をご紹介しましょう。 北斎は、享和元年(1801)、数え42歳の頃から「画狂人」という画号を用い始めます。例えばこちらの「見立三番叟」という肉筆画。

判決文を読んでみよう! ─エムブレムサーガ編─

0.はじめに 2001年7月、任天堂が裁判所に対してとある訴訟を起こしました。 相手先はファミ通の発売元であるエンターブレインと、有限会社ティルナノーグ。目的はとある一本のゲームの販売差し止めと、賠償金支払い。そのゲームソフトの名前は「ティアリングサーガ ユトナ英雄戦記」。 これが有名なエムブレムサーガ裁判の発端です。これは一部任天堂が勝訴しつつもかつ、「クリエイターが別会社で似たような作風の作品をつくっても問題がない」という判例が下ったことで有名です。ある種、ゲームの

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UIから「白」が消える日

こんにちは。ritarと申します。 今年の10月頃、YouTubeに大きいデザイン変更がありました。 アイコンの変更、角丸やレイアウトなど全体的に一新されているのですが、中でも自分が仰天したのは「アンビエントモード」という新機能です。 このモードをオンにすると、動画の下側のUI領域が、まるで動画部分から光が漏れているかのようにじんわりと色づきます。 これを見たとき自分は度肝を抜かれました。なんたってUIの領域にコンテンツの色が侵食しているのです。 これを踏まえて、最近U