【37】 アーモンド(扁桃体)が暴走しているらしい。落ち着けアーモンド!
人が恐怖を感じるときというのは、頭の中心部にあるアーモンド状の「扁桃体」という部分が活発に活動するからなのだそうですね。
心臓がドキドキ、筋肉がこわばる、血圧が上がる、冷や汗をかいたり、脚が震えたりする。このシステムは、命の危険と隣り合わせに生きてきた、先祖様たちから受け継がれてきた大事なセンサーでもあるそうです。
マンモスに襲われる危険などから、命を守るために先祖様が発達させてきた扁桃体、アーモンド。
現代を生きる私たちにとって、マンモスに襲われるような危険はなくなりましたが、脳みその機能として、こうして長い間、受け継がれているからには、何らか必要性があるのでしょうかね。
扁桃体は、地球上の進化の、ずっと後の方で発生したものだそうで、人間の他、猿や犬、猫などでよく発達しているそうです。
実際、サルの扁桃体を壊すと、怖がっていたヘビにも平気で近づくようになるのだとか。(人間てヤツは、恐ろしい実験をしますな)
一方で、太古から存在し続けるワニやサメ、昆虫や魚などからは、情動の変化を伴うような反応がないのだとか。
でも、昆虫だって魚だって、「危険を察知すると逃げるじゃん」と不思議に思っていましたが、魚などには、特定の神経細胞が存在していて、それが哺乳動物の扁桃体と同じ役割を果たしているのだとか。
つまり、どの生物にも、命を守るためのセンサーがついているのですね。
そんな扁桃体ですが、「こわい」って思うセンサーがあるからこそ、人間の私たちは危険を察知して、身を守れるんですよね。
そして、扁桃体が発達しているからこそ、人は誰かに共感することが可能なのだそうです。一緒になって、誰かの悲しみに心が痛んだり、誰かの喜びを我がことのように喜んだり。
様々な感情を味わえるのも、脳みそのミソちゃんの一部、アーモンドがせっせと働いてくれているからなのです。
ああ、扁桃体よ、ありがとう。
ごくろうさん。
一応、礼を言わせていただくよ。
しかしね。
しかしなのだよ。
こんなメカニズムを知ったとて、通院時の注射の苦痛は、依然続いているのだよ。
なんとか少しでもマシにできないものか。
活発な扁桃体を、少し黙らせたいのだよ、私は。
そこで注射の際に、自分を客観視してみることにしました。
恐怖や不安は、「気づいて認識する」ことが、それらを和らげる第一歩であるのだと、さまざまな本に書いてあったのです。
素直に本の通りに実践してみました。
医師が注射針を準備している間、外側から自分を眺めながら、同時に少しでもリラックスするために、肩の力を抜き「ふーふー」と深呼吸。
扁桃体の脳波を調べると、呼吸とぴったり一致していることも、実験で明らかになっています。
つまり、不安が強くなると扁桃体の波形と呼吸が同時に早くなり、自分の意志で呼吸のペースをゆっくりにすると、扁桃体の脳波が鎮まって不安が和らぐことがわかっているそうです。
よく緊張したときには「深呼吸しなさい」と言われますが、理に叶っているのですね。
さて。
それによって、注射は楽になったのか?
……と聞かれると、別に何も変わってはいません(笑)
これがリアル(笑)
痛くて、怖くて、本当にイヤな時間です。
けれども状況が変わらないなかで、私自身の恐怖は少しだけ減ったように感じました。
「自分は今、こわいんだ、嫌なんだ」とはっきりと自覚したことで、痛みや苦痛を味わうことに、ある種あきらめることができたのかもしれません。
そうして通院を重ねるうちに、さらなる別の変化がありました。
「すみませんが、注射のうまい人を呼んでください。〇〇先生でお願いします」と堂々と要求するようになったのです。
これまでは、医療者側だって失敗したくてしているわけじゃないし、大人の対応として「大丈夫ですよ」と我慢していました。
しかし「痛いなあ、怖いなあ」とミソちゃんの声を認めてやるうちに、「いや、大丈夫じゃないよね。心底苦痛なんだ」と再認識したのです。
「注射くらいでガタガタ言うなよ」という私の「大人の声」に対し、「イヤなものは、イヤです」と素直に思え、実際にそれを伝えられたことに、ミソちゃんも喜んでいるのがわかりました。
いつもはケンカの多い私のミソちゃんと、一緒になって自分の行動を喜べた。
「私」と「ミソちゃん」の気持ちと行動が一致した。
それは、シンプルにとても気持ちがいいものでした。