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わたしをつくる、記憶のなかのごはん

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わたしをつくる、わたしの記憶の中のごはん。 そこに乗せられた想いと経験を振り返りながら、わたしのこれまでの人生を見つめ直し、これからの人生に繋げていくために書いていきます。自分に…
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記事一覧

あの洋食屋のオムライス

あの洋食屋のオムライス

今日はクリスマス。
ついに、給食が冬季休暇に入ってしまった。

1. 給食がない日

小学校は年内最終日。
首を長くして待っていたクリスマスプレゼントがようやく届いたと思ったら学校にいかにゃならんとは、小学校もなかなか無情なものだ。

そして、小学校の長いおやすみとセットなのが、給食のおやすみ。これがなかなか、地味に世の子育て世代を苦しめる。
これから約2週間、給食なし。あさ、ひる、よる。時にはお

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病床の父をメイパトロールした日の後悔

病床の父をメイパトロールした日の後悔

「あ!こんなとこに売ってるやん!」
今日ネギを買いに出かけたら、いつもの激安スーパーの大安売りコーナーで、78円になっているフレーバー付きのいろはすを見つけた。いろはすレモン味。
父が入院した時に探しまくった、フレーバー付きのいろはすを探し求める癖が、いまだに抜けないでいる。
もう、必要ないのに。

「求む!いろはすフレーバー!」
って高らかに挙げたアンテナのおろし方がわからず、いまだにいろはすに

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未練はどこからわいてくるのか

未練はどこからわいてくるのか

東京でひとり暮らしをしてよかった。
納豆が食べられるようになったし、母が作ってくれていた、温かい家庭料理への感謝の気持ちが芽生えた。そして何より、「青春」とよべる時期を過ごせた。
友人と心ゆくまで遊び倒したあの4年間は、わたしの人生の宝物になった。

1. 湯豆腐

つくばを脱走して、母と姉の絶大な協力のもと、わたしは三軒茶屋で1人暮らしをはじめた。眠らない街、三軒茶屋。
夜中に仕事から戻っても、

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リメンバー・ほとけのよっちゃんした夜

リメンバー・ほとけのよっちゃんした夜

父方の祖父はめちゃくちゃ優しい人だったらしい。
らしい、というのは周りから聞いた話だからで。祖父は幼い頃に天国に行ったから、祖父が優しい人だったのかどうか、正直あんまり知らない。

1. ありがたい命名

祖父は高野山で建具職人をしていた。
かの有名な、高野山金剛峯寺の建具、ふすまや屏風を作ったり修繕したりしていたらしく、わたしたち姉妹の名前は、祖父が金剛峯寺から貰ってくれたありがたい名前だと聞か

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ほっけ弁当がコースディナーになることがあるから、料理の可能性は未知数なのだ

ほっけ弁当がコースディナーになることがあるから、料理の可能性は未知数なのだ

「あけるな!キケン!」
そう書いて、心の底にしまってある記憶がある。
うかつに思い出したり、お酒を飲んだ勢いで他人にペラペラと話したりしないように、心の奥の方にしまってある。

誰にだって、あると思う。ひとつやふたつ。
これは他人には話せないな。って過去。
心の奥底に、鍵をかけてしまってある過去。
その過去を、「あけるな!キケン!」の張り紙をひっぺがしてこじ開けて、noteに書いている。
正気か?

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アクシデントに見舞われた旅でさえ、愛おしく思える〜ずぶ濡れイタリア記〜

アクシデントに見舞われた旅でさえ、愛おしく思える〜ずぶ濡れイタリア記〜

おいしいものを食べること、誰かに食べてもらうことに大きな喜びを感じているということを、これまで知らずに生きてきた。

これほど食べることへの執着があるのに、なぜ今までそれに気づくことが出来なかったのか、むしろ不思議だ。

あの母と行ったイタリア旅行だって、自分にとって大切なものを知っていれば、全く違う過ごし方をしたはずなのに。やっぱり、自分にとって大切なものを知ることは、幸せな人生を送るための第1

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心を贈るときに、あなたは何を贈りますか

心を贈るときに、あなたは何を贈りますか

窓を開けると、秋の心地いい風とともに、懐かしい香りが部屋に入ってきた。
甘酸っぱい、キンモクセイの香り。
今年はおそかったねぇ。ようやく訪れた秋を、胸いっぱいに吸い込む。

1. キンモクセイの便り

実家にも昔、大きなキンモクセイの木があった。玄関の正面、庭の角に植えられた大きなキンモクセイ。
あんな特等席に植えるなんて、父もキンモクセイが好きだったんだろうか。

毎年ちょうど母の誕生日の頃に、

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家族が「あれ」というそれ。わたしの暗黒期からみえたこと。

家族が「あれ」というそれ。わたしの暗黒期からみえたこと。

うっすらと空が明るみ始める頃、わたしは高速バスに揺られていた。
スタバのタンブラーに淹れたコーヒーを、やけどしないように、少しずつ口にしながら東京へと向かう。

今日はちゃんと定刻通りに着くかなぁ。
朝日が昇る窓の外を、ぼんやりと眺めながらあくびをして、もうひと眠りした。

つくばから東京までは、高速バスで1時間ほど。
時間はかかるけど、朝が苦手な私には二度寝するのにちょうどよかった。
問題なのは

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主婦の心得と不得意なこと。ときには喧嘩も必要かな。

主婦の心得と不得意なこと。ときには喧嘩も必要かな。

いややん。なんか怒ってるやん。
日曜日は朝から町内清掃とこども会の会合があった。
こども会のハロウィンパーティーの準備を一通り済ませて帰宅すると、なぜか夫が、俺様はめちゃくちゃ怒っているというアピールをしてきた。
土曜日が雨だったから部屋干ししていて、そのままになっていた子どもたちの学校の手提げ袋に、給食の白衣と上履きを詰めながら、猛烈に不機嫌なオーラを放ってくる。
怒ってるからってそんな表情なる

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休業前日のこころと、やっぱり誰かのために作りたい雑炊

休業前日のこころと、やっぱり誰かのために作りたい雑炊

なんだかいつもよりも息が深く吸えている気がする。そんな秋の昼下がり。

1. 家族のための雑炊

12時を回っていることに気づいて、キッチンに立った。
ごはん、あったっけな?と炊飯器に目をやるとモニターには42時間経過の文字。
そうだ、朝ごはんに出せなくて今朝はパンにしたんだった。そのまま食べるには厳しそうなご飯が1人分ほど残っていた。

ごはんを復活させる簡単な料理を思い浮かべてみる。焼きおにぎ

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逃げ出す為に考えついたとっておきの秘策

逃げ出す為に考えついたとっておきの秘策

会計士受験を控えた私は占いにはまっていた。
ズバリ言うわよ、の細木数子氏の占いに。
自分の星の本を買ってきて人生の命運を左右する会計士試験受験年の運勢を占う。

2004年、大殺界。
わたしの星はその年大殺界だった。

まぁ、占いやから。と自分をはげます。でも、彼女の提案で海砂利水魚から改名したクリームシチューはよく売れているし。おさる→モンキッキーへの改名はよくわからなかったけれど、とにかく今年

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食いしん坊が、食べられなくなるとき

食いしん坊が、食べられなくなるとき

中学生になり、姉の後を追うようにしてソフトボール部に入ると、世界が変わった。ごはんが美味しくて仕方ない。
食べ物が喉を通らなくなるのは公式戦の前くらいで、練習や試合の後は何を食べても美味しかった。
練習帰りに部活仲間とこっそり買い食いした肉屋のささみチーズカツ。あの味を超えるチキンカツに出会うことは、きっとこの先ないと思う。
もりもり食べて、少食のわたしはいなくなり、食いしん坊のわたしだけが残った

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自分勝手に生きてきたのに、自分の心に正直じゃなかった

自分勝手に生きてきたのに、自分の心に正直じゃなかった

結構な親不孝者かもしれない。
自分も親になった今、過去の行動を振り返ってみるとあまりに自由すぎて親に申し訳ない気持ちになってきた。
ま、過去に戻っても同じくやりたいようにやらせてもらうけども。

1. 決断力があるって事で良い?

合格してたら合格発表のあと、事務所においで。入所式やるから。
お蕎麦をご馳走になった夜、所長から電話でそう言われていたから、合格を確認したらすぐに大阪に向かった。
入所

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好きのその先はどうなっているのかなぁ

好きのその先はどうなっているのかなぁ

幼い頃、パンが苦手だった。
そもそも食が細くて、食べる前から完食できるかどうかのプレッシャーで食べ物が喉を通らない。その上口の中の水分を持っていかれるパンは特に苦手だった。
昭和の保育園には土曜保育があって、給食を食べた後に園庭に出てお帰りの集会をする。皆がさようならの挨拶をしている時も、わたしは1人お部屋に残されオエってなりながらパンを必死で飲み込んでいた。
そんな私の姿を母は柱の陰から見て泣い

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