見出し画像

DX時代こそ、システムエンジニア(SE)に必要なスキル。「5者理論」とは?

今、デジタル化時代にあって、経営・ビジネスの「DX化」への対応が急務とされています。そこで活躍が期待されるのが、IT技術を持ったシステムエンジニア、所謂「SE」と呼ばれる人材です。
昨今では、「コンサルタント」という役割と区別 *1されるケースが多くなっていますが、本稿ではその領域までを含めたスキルを持った人材の呼称として使用します。汎用コンピュータ全盛時、「コンピュータメーカーのSEが何にでも対応していた時代の技術者の役割」として位置付けられていた人材スキルということです。
コンピュータ技術が細分化された現代にこそ、「5者理論」として示すような「俯瞰的に考察し、行動できる人材としてのSE」が必要だと考えています。

【5者理論】
1.「技術者」であること。
言葉通り、IT構築に求められる技術(構築技術、利活用技術など)に「精通」した人材であること。あって当たり前というレベル(お客様から当然のように期待されること)のスキルがあること。
2.「医者」であること。
専門分野で発生した事象に対して、予防や治療行為(原因究明とその修復)が出来る人材であること。トラブル発生時の対応やセキュリティー対策などに、「的確」に対応できるスキルがあること。
3.「学者」であること。
専門分野(特技、得意領域、お客様に関する業界・業種・業務など)における知識の習得に加え、探求心を持った人材であること。お客様の状況や環境を「研究(学習)」し、「最適な提案とその適用・構築」に精通したスキルがあること。
4.「易者」であること。
理論に基づく地道な「学者肌」が必要であると同時に、お客様の未来に「新たな期待や希望を与える」ことができる人材であること。もちろん「危惧(リスク)」に関する情報提供も。一歩先を行く(未来を予想する)心構えとともに、それらを「言い切る」スキル(度胸かも)があること。(学者肌に基づく、根拠(裏付け)を持ちえた上で)

上記の4つの人材スキルに加え、実は5番目が一番重要なスキルかもしれません。

5.「芸者」であること。
これは「お酒が飲めること」とか「付き合いが大事」ということではありません。もちろんそういうことが必要な場面もあるかもしれませんが、ここでは「一芸(秀でたスキル)」を持った人、言うまでも無く「特徴ある技量を持った(強みを持った)人材」であるということです。
それがあることで、お客様から「声掛けをして頂ける」ことになるということ。どんなに優れ、優秀な人材(SE)であっても、お客様から呼んで頂けなければ「宝の持ち腐れ」ということになってしまうからです。

以上、持って欲しいスキルとして記しました。

最後、5者理論で示した点について「留意事項」ということで、敢えて記しておきたいことがあります。

【留意事項】
・「芸者」という点で記した「一芸に秀でること」の意味について
これは決して「スペシャリスト」になれといっている訳ではありません。特に日本のビジネス界においては(筆者の経験談)、スペシャリストの評価はあまり高くないように感じます。「専門バカ」という言葉があるように、「それしか分からない、考えようとしない *2」人材に対しては、「話が通じない人間」という評価がされがちです。
よって、秀でた技術を持つことは重要ですが、それだけに拘らないこと、出来るだけ広い知識、技術を身に着ける努力を惜しまないことが肝要と考えています。(マルチの受け答えが出来る、すること)

*1:「コンサルタント」という役割と区別
その昔、コンサルタントの役割と言えば、企業の経営分野やビジネス分野に関わる「経営マネジメント分野の分析や提言」といったことが中心だったと思います。
ただ、IT活用が定着し「DXという取り組み」が、経営・ビジネスにおいて欠かせないという認識が出来上がった今にあっては、「コンサルタント」という役割がIT利活用分野でも求められるようになったと考えています。「SE」という呼称で対応していた業界も、システム構築工程を分け、「上流工程(IT利活用ビジョン、IT構築計画)」と「下流工程(システム開発工程(要件分析からテスト))」とし、前者を「コンサルタント」、後者を「SE、PG(プログラマー)、OP(オペレーター)など」と区分けして対応し始めています。
「コンサルタント」=「考える人(分析とIT利活用提言する人)」、「SE」=「作る人」ということでしょうか。ただ、SEが上流工程を理解し、実際に出来ることとの擦り合わせが出来ていなければ、「上流工程のビジョンは立派」だが、「絵に描いた餅」になりかねないことは言うまでもありません。

*2:スペシャリスト(それしか考えない、考えようとしない)
少し極端な使い方をしていますが、「この分野の技術に関しては自分の領域だ」ということは、「他のことは自分の領域ではない」と割り切っても良いと勘違いさせてしまうことにも成りかねないということです。
実際に、スペシャリストを制度化した際、お客様の顰蹙を買ったという事態が生じました。それは、ある提案の場に「提案書に記された技術」を補足する要員として、関連の技術者を「10数名」も引き連れて臨んだことです。万全を期す思いだったのでしょうが、結果的にはほとんどのスペシャリストが話す機会もなく(必要が無く)、提案は終了しました。それに対し、お客様から「ここに出席した人材の工数まで面倒見るのか」といった言葉が出たということです。良かれと考えた策が裏目に出たという典型例ですが、スペシャリストということから「それ以外は答えられない」「答えなくてよいのだ」という開き直れる環境を与えてしまった結果とも言えるのではないでしょうか。
特に、日本においては、お客様が「自分と同じか、近いレベルで話が出来る人」を望み、「ある技術のこと以外は話が通じない、または割り切る人材」を好まないという傾向が高いと考えています。日本のビジネス界においては、スペシャリストより、ジェネラリストが重宝される所以と考えています。

本理論は、私が入社直後の配属先の先輩SEから、最初に「伝授」されたことでもありました。

いいなと思ったら応援しよう!