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社会心理学者のつぶやき

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ふと考えたことを思いつくままにまとめていきたいと思います。 思考の萌芽です。これから発展させていくための基礎です。 少しは思考の参考になるかも?
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記事一覧

取れる選択肢と取り得る選択肢は違う

取れる選択肢と取り得る選択肢は違う

(2021.03.08に書いたブログ記事を転記したものです)

先日,婚活者向けのとある記事を読みました。その記事は,どうすれば良い出会いにめぐり会えるか,すなわち出会いの確率をどのように上げるかという記事でした。

その記事では出会いの確率を上げる方法として以下のことが書かれていました。

相手に求める条件を変える(今までより求める理想を広くするなど)

いつもと違うことをしてみる(お見合い,イ

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婚活パーティーの際,男性が選ぶ女性はなぜ集中するのか?

婚活パーティーの際,男性が選ぶ女性はなぜ集中するのか?

(2021.03.02に書いたブログ記事を転記したものです)

コロナが流行する前,スタッフ(お手伝い)として婚活パーティーによく参加していました。

傍から見ていて興味深かったのは,男性が第一印象で選ぶ女性が極端に集中することです。だいたい6~7割,ときには9割くらい,特定の女性に集中します。しかも,さらに興味深いのは,どの女性に集中するのか,傍から見ておおよそ見当がつきます。つまり,「あの女性

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婚活における「妥協ではなく,妥当」という発言について考えてみた

婚活における「妥協ではなく,妥当」という発言について考えてみた

(2021.02.26に書いたブログ記事を転載したものです)

結婚支援者(婚活アドバイザーとか,結婚相談所の方とか)の方から,たまに,「妥協ではなく,妥当」「あなたに合った(妥当な)相手を選ぶことが結婚への近道」という言葉を見聞きします。

お気持ちはよくわかります。結婚希望者がまったく自分は何も努力しないのに,新垣結衣と結婚したいとか,有村架純と結婚したいとか言っていたら,「いやいや,それは難

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「出会いがない」とはどういうことなのか?

「出会いがない」とはどういうことなのか?

(2021.02.18に書いたブログ記事を転記したものです)

恋愛や結婚をしたい人の発言として「出会いがない」や「いい人に出会えない」という発言はよくみられます。実際,国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査(p.19)においても未婚者(25~34歳)が独身でとどまっている理由(結婚できない理由)のトップは「適当な相手にめぐり会わない」です。この理由を端的にまとめるのであれば,「出会いがな

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読書感想|惨事ストレスとは何か

読書感想|惨事ストレスとは何か

(2021.01.15に書いたブログ記事を転載したものです)

『惨事ストレスとは何か』 from 河出書房新社災害時、被災者を救助する消防職員、自衛隊員以外にも医師や看護師、保育士、公務員などあらゆる人が深刻な惨事ストレスを受ける。その実態と対策を生々しい事例を交えて解説する。

本書感想|社会心理学とは何か本書の筆者は私の大学院時代の恩師である。先生の丁寧な指導のおかげで今の私があるが,その裏

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AI婚活についての一見解

AI婚活についての一見解

(2020.12.09に書いたブログ記事を転記したものです)

 「内閣府が”AI婚活”活用を支援へ」という記事が発表されました。

 背景のアルゴリズムがわからないのでなんとも言えない部分はありますが,基本的に「マッチング」という点ではメリットがあるかもしれないけれども,「少子化対策」や「恋愛・結婚の意味/意義」という点ではデメリットが大きいのではないかという風に私は考えています。

 以下,現

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基準を作ること:否定性に基づいた基準ではなく,可能性を広げる基準づくりについて

基準を作ること:否定性に基づいた基準ではなく,可能性を広げる基準づくりについて

(2020.08.25に書いたブログ記事を転載したものです)

 Twitterで「婚活コンサル」を名乗る人のあるツイートを見た。趣旨は以下。

 この主張の妥当性はともかく,こういった「否定性に基づく基準づくり」はご本人(婚活コンサル)の仕事を増やすためにはいいのかもしれないけれど,婚活者の可能性という点では負の作用があるのではないかと思う。

 どういうことか。

 まず,「否定性に基づく基準

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調査が乱発される状況

調査が乱発される状況

(2020.07.30に書いたブログ記事を転載したものです)

 調査に携わるものとして,最近とても気になることがあります。それは,調査(アンケート調査)が簡単に実施されることです。

 ビッグデータの時代だからでしょうか,企業もよく調査をしています。たとえば,飛行機に乗ったあとに届く満足度調査はその一例です。「調査をすることで何かが明らかにできる」と考えているから多くの企業で調査をしているのだと

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「薬」というワナ

「薬」というワナ

(2020.07.17に書いたブログ記事を転載したものです)

 最近,海外ドラマ『ブル/BULL 心を操る天才』をよく観ています。そのなかのある回で,オキシコドンというオピオイド系の鎮痛剤は,違法薬物(ヘロインなど)依存へとつながりやすいという話がありました。「へー,そうなんだ」と思うとともに,やり切れなさもありました。

 その回を観た後に調べたのですが,オキシコドンという鎮痛剤は麻薬取締り法

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統計的差別

統計的差別

(2020.07.10に書いたブログ記事を転記したものです)

 山岸(1992)論文を読みました。詳細な内容紹介は先日のブログをご覧ください(もはや論文そのものを読んだ方がいいのでは?というレベルです)。

 同論文は全体として面白かったのですが,「統計的差別」の分析例は,たとえば,近年見られる女性管理職の割合を〇〇にするといったアファーマティブアクションの理論的根拠に関連しており,興味を惹かれ

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山岸論文のまとめ

山岸論文のまとめ

(2020.07.09に書いたブログ記事を転記したものです)

 「マイクロ・マクロ社会心理学の一つの方向」という論文を読みました。山岸俊男先生が1992年に書いた論文です。この論文が書かれたということは当時そのような視点がマイナーであった,あるいは「勢いのある若手」的な視点であったということかなと思いました。

 同視点は面白く,この視点を発展させていけば現在の日本の社会心理学界は現状と違ったの

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ドラッグとしてのナンパ

ドラッグとしてのナンパ

(2020.07.08に書いたブログ記事を転記したものです)

 7月8日はナンパの日らしいです。なんのためにある日なのだろうという感じもしますが,せっかくですので久しぶりにナンパについて書いてみたいと思います。

ナンパとは何か? そもそもナンパとは何なのでしょう。「ナンパの社会史」という修士論文では,「男性が見知らぬ異性に対して性的な意図をもって声をかけ,短期的な性(愛)的関係を構築してくこと

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心はどこにあるの?という問い

心はどこにあるの?という問い

(2020.07.07に書いたブログ記事を転記したものです)

 院生の頃,いろいろな人に「心はどこにあるの?」と尋ねていた記憶があります。「脳だよ」「その人に備わっているもの」「人と人との間」など多種多様な答えがありました。が,当時はどれも納得できませんでした。

 当時,納得できないなかでも,最もしっくりきたのが「人と人との間」でした。しかし,心は人と人との間にあるはずなのに,個人を対象として

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学習/発達論の展開のブックレビュー

学習/発達論の展開のブックレビュー

(2020.07.03に書いたブログ記事を転記したものです)

 『パフォーマンス心理学入門』(新曜社)第1章の図1「学習/発達論の展開」に関連する書籍を日本語を中心にまとめました(2020.07.03現在)。

 参考にした文献は以下です。引用文献から関連しそうな書籍を抜き出しました。

『スタンダード学習心理学』の第1章,第3章,第4章,第5章。

佐伯 胖(2014).そもそも「学ぶ」とはど

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