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取れる選択肢と取り得る選択肢は違う

(2021.03.08に書いたブログ記事を転記したものです)

先日,婚活者向けのとある記事を読みました。その記事は,どうすれば良い出会いにめぐり会えるか,すなわち出会いの確率をどのように上げるかという記事でした。

その記事では出会いの確率を上げる方法として以下のことが書かれていました。

  • 相手に求める条件を変える(今までより求める理想を広くするなど)

  • いつもと違うことをしてみる(お見合い,イベントに参加するなど)

  • 第三者のアドバイスを聞く

  • 気持ちを変える(警戒心より好奇心を持つなど)

これらは確かに出会いの確率を上げると思いますし,大事なことであるとは思います。

ただし,理想の選択肢,取り得る選択肢,取れる選択肢というのを区別して考えることが必要であるとも思いました。

理想の選択肢とは,理想的にありうるすべての選択肢です。そのうち時間的・空間的に実現可能な選択肢が取り得る選択肢です。さらにその中で生活感覚として現実的に選べる選択肢が取れる選択肢です。

抽象的でわかりにくいと思いますので,具体的に書いてみます。たとえば,仕事の合間のランチに何を食べに行こうかと考えたとします。理想的には,そばでも,カレーでも,ピザでも,牛丼でも,パスタでも,色々な選択肢があります。これが理想の選択肢です。しかし,職場の近辺には,そば屋,牛丼屋,パスタ屋しかありません。そうであれば,時間的・場所的に,ランチで食べることができる選択肢は,そば,牛丼,パスタのいずれかしかありません。これが取り得る選択肢です。そして,その時は給料日前で,自由に使えるお金が1000円弱しかありませんでした。そうであれば,そばか牛丼しか食べることはできないでしょう(パスタは高いという前提です)。これが取れる選択肢です。

このように,理想の選択肢,取り得る選択肢,取れる選択肢というのは微妙に違います。そして,上の例から想像されるように,大事なのは取れる選択肢です。どれだけ理想の選択肢や取り得る選択肢が多くても,取れる選択肢が増えなければまったく選択肢が増えていないのと同じです。

出会いの確率を上げるための理想の選択肢はたくさんあるでしょう。たとえば,「同級生だけでなく,何歳でも構わない」「国際結婚もOK」「無職も大歓迎」などなどです。

しかし,その中でも取り得る選択肢は変わってきます。たとえば,周囲に既婚者しかいなければ,どれだけ理想の選択肢を広げても,取り得る選択肢は変わりません。たとえば,国際結婚OKでも,国内出身者しかいなければ,取り得る選択肢は変わっていません。取れる選択肢に至ってはもっと狭まっていきます。

さて,翻って,ある記事による出会いの確率を上げる方法についての提案を見てみたいと思います。

  • 相手に求める条件を変える(今までより求める理想を広くするなど)

  • いつもと違うことをしてみる(お見合い,イベントに参加するなど)

  • 第三者のアドバイスを聞く

  • 気持ちを変える(警戒心より好奇心を持つなど)

実はこれらは,基本的には「理想の選択肢」あるいは「取り得る選択肢」を広げましょうという話です。たとえば,20-30代と結婚したいという理想から40代も含める理想に変える(相手に求める条件を変える)場合,取り得る選択肢は確かに広くなっています。しかし,20-30代と結婚したいという理想はもしかしたら「子どもがほしいから」*とか「親からの願い」とかのように何らかの理由がある場合,40代も含める理想に変えることは,生活感覚として現実的に選べる選択肢,つまり取れる選択肢を広げていることにはなりません。

*注)40代は子どもができないという意味ではありません。

気持ちを変えるというのも同様に,取り得る選択肢を広げるための方法です。

「いつもと違うことをしてみる」「第三者のアドバイスを聞く」は,取れる選択肢を広げるようなアドバイスと捉えることもできますが,「いつもと違うことをする」というのは,(時間がなかったり,お金がなかったり,機会がなかったりするため)なかなか現実的に簡単にはできないことを踏まえると,これも取り得る選択肢を広げるための方法でしょう。

そう考えると,「第三者のアドバイスを聞く」ことが唯一,取れる選択肢を広げる方法かなと思います。でも,おそらく多くの婚活者が友人などにアドバイスを受けているであろうことを踏まえると*,もはやこの方法を婚活者向けの記事によるアドバイスとして提示してもあまり有効ではないのでは?と思ってしまいます。

*注)ただし「友だちに隠れて婚活しよっ」みたいな広告もあるので,もしかしたら友達からのアドバイスを受ける婚活者がそんなに多くない可能性はあるかもしれません。

「出会いの確率を上げる方法」として色々な選択肢を提示することはその選択肢を取れる人にとっては良いことです。しかし,その選択肢を取れない人もいます。そのような人たちに対して「このような選択肢(取り得る選択肢)があるのに,なぜそれを選ばないの?」と言うことは,取り得る選択肢と取れる選択肢を混同してしまっています。すべての選択肢を皆が取れるわけではないことを忘れてはいけません。

また,婚活者を支援する側として,理想の選択肢や取り得る選択肢を増やすこと,そしてそれらの選択肢を婚活者に向けて提示することは確かに大切ではありますが,取れる選択肢をどのように増やせるかを考えることもそれと同じくらい大切であると思います。

むしろ,それこそがプロの支援者としての腕の見せ所なのではないかと考えています。

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仲嶺真
ただそばにいることがサポートなのかなと思っています。また見に来てください。気が向いたときにご支援お願いします。