マガジンのカバー画像

弱おじの本棚

199
読んだ本の記録です。
運営しているクリエイター

#ミステリー

「闇祓」を読みました。

「闇祓」を読みました。

辻村深月さんの「闇祓」を読んだ。

ホラーミステリーというジャンルで、ドキドキしながら、時に共感しながら楽しく読み進めた。

本書のテーマである造語の闇ハラだが、現実世界でも往々にして起こっていることだと感じる。

自分の闇を他人に押し付け、自分本位に苦しめていないか。
心を曝け出しているようで、相手の困った顔を見てみないふりしていないか。
なんなら可哀想な表情を見たいとまで思ってないか。

本書

もっとみる
「名探偵のままでいて」を読みました。

「名探偵のままでいて」を読みました。

小西マサテルさんの「名探偵のままでいて」を読んだ。

認知症を患った祖父が、その幻視を通して事件を解決していく物語。

主人公である孫娘との、暖かなやり取り。
周囲の人間たちとのつながりに心がほっこりする。

本作は、作者の父が実際に同じ病を患ったところから発想を得たそうだ。

きっと介護の中で辛いことややりきれない気持ちも多くあったことだろう。
それを物語に昇華し、多くの人の感動や喜びを生み出し

もっとみる
「変な家」を読んで「正攻法で戦わないことの大切さ」について考えた話。

「変な家」を読んで「正攻法で戦わないことの大切さ」について考えた話。

雨穴さんの「変な家」を読んだ。

映画化もされて話題となっている作品。
面白い。
間取り図と文章で読ませる新感覚のミステリー。そこに小説特有の人間の心情が折り重なって深みが増す。

インタビュー記事で作者の雨穴さんは「正攻法で小説を書いてもプロに勝てるはずがない」と思って本作を書いたと言っていた。

発想の転換。
敵の少ない領域を選ぶ賢さ。

もちろん、人生において自分がやりたいことをぶらすべきで

もっとみる
脇役の一言が生きる勇気をくれるという小説の醍醐味 〜「木挽町のあだ討ち」を読んで〜

脇役の一言が生きる勇気をくれるという小説の醍醐味 〜「木挽町のあだ討ち」を読んで〜

永井紗耶子さんの「木挽町のあだ討ち」を読んだ。

面白い。
ミステリーとして素晴らしいし、タイトル回収の美しさに清々しい読後感を味わえた。

時代小説はちょっとなぁ‥と言う人も、騙されたと思って最後まで読んで欲しい。
実際私も、読み始めこそ時代小説特有の文章なら馴染めなかったが、今は本当に最後まで良かったなと思えている。

物語は「あだ討ち」の謎を巡って目撃者にインタビューをする形で進む。
それぞ

もっとみる
「ハヤブサ消防団」を読みました。

「ハヤブサ消防団」を読みました。

池井戸潤さんの「ハヤブサ消防団」を読んだ。
テレビドラマでもやっていたけど、そっちは観ていない。
あえて小説で読む。
そんな自分が嫌いではない。

久しぶりの池井戸さん作品。
やっぱり面白い。流石すぎる。
読んでいて飽きがこないし、信頼してページを捲ることができる。一抹の不安さえ与えてくれない。そんじょそこらの一番人気の馬よりも信頼度が高い。

ざっくり感想を述べると、全然思ってたストーリーと違っ

もっとみる
これはエジプトミステリーであり、エジプト群像劇〜「ファラオの密室」を読んで〜

これはエジプトミステリーであり、エジプト群像劇〜「ファラオの密室」を読んで〜

白川尚史さんの「ファラオの密室」を読んだ。

ミステリーの賞を受賞されている作品で、謎解きを楽しみながらワクワク感と共に一気読みできた。

まず、設定が変化球すぎて面白い。
エジプトを舞台にした小説ってはじめて読んだし、未知の設定がすんなりと腑に落ちていくあたり、筆者の力はすごいなあと感心してしまった。

ミステリー要素はもちろんだが、登場人物の人間らしさがとても好きだ。
友人や家族との人間関係に

もっとみる
「龍の墓」を読みました。

「龍の墓」を読みました。

貫井徳郎さんの「龍の墓」を読んだ。

本格ミステリー小説。
気持ちいい。
予期せぬところから結論が飛んでくると、「この手があったか!」と驚嘆してしまう。すごい。

普段はあまり推理物は読まないが、こうしてたまに別ジャンルの読書をするのは良い物だなと感じる。
凝り固まった脳内をいったん柔らかくして、再構築してくれる感覚。

別にこのトリックが私の日常生活に直接的に役に立つことなんてないのだろう。むし

もっとみる
「鏡の国」を読みました。

「鏡の国」を読みました。

岡崎琢磨さんの「鏡の国」を読んだ。

本格ミステリに加えて、恋愛小説や社会小説の要素もふんだんに盛り込まれていて、すごく読み応えがあった。

小説の中で主人公が小説を読み進めていくという設定が面白い。
物語の中に物語があって、自分が今どこの世界に属しているかわからなくなるくらいの没入感がある。

ミステリ好きにはもちろん、ミステリ初心者にも是非お勧めしたい一冊でした。

大切な人へ思いを言葉にして伝えようと思えた。 〜「クスノキの番人」を読みました〜

大切な人へ思いを言葉にして伝えようと思えた。 〜「クスノキの番人」を読みました〜

東野圭吾さんの「クスノキの番人」を読んだ。

とてもハートフルで、その中でもミステリー要素もふんだんに盛り込まれており、最後まで楽しく読めた。

僕が誰かに伝えたい「思い」ってなんだろう?と考える。

ありがとう。大切だよ。感謝しているよ。
伝えたい感情、伝えたい人はいるし、伝えなきゃいけないとも思うけど、いざ伝えようと思うと躊躇したりする。

物語のようにクスノキが存在して、僕の思いが口にせずと

もっとみる
小説の楽しみ方は一つじゃないし、人生の楽しみ方もまた、一つではない 〜「世界でいちばん透きとおった物語」〜

小説の楽しみ方は一つじゃないし、人生の楽しみ方もまた、一つではない 〜「世界でいちばん透きとおった物語」〜

杉井光さんの「世界でいちばん透きとおった物語」を読んだ。

驚かされた。
感動した。

こんな小説があるんだ。
こんな方法もあるんだ。

どうしても人は既成の価値観にとらわれてしまう。
そこに柔軟性を持ち込んで、視野を広げてみるときっと人生は楽しくなる。

読んでよかった。
世界が広がった。
タイトルの通り、僕の視界も透き通ったかもしれない。

手法だけじゃない。
端々の言葉遣いもとても美しい。

もっとみる
全員が殺人鬼に思えてしまえて面白い 〜「レモンと殺人鬼」を読みました〜

全員が殺人鬼に思えてしまえて面白い 〜「レモンと殺人鬼」を読みました〜

くわがきあゆさんの「レモンと殺人鬼」を読んだ。

登場人物が皆んなどこかおかしい。
端的に言うとヤバい。
だから全員が疑わしくなって、どんどん楽しくなっていく。
ページを捲る手が止まらない。

特に後半で主人公のキャラが一変していく様が印象的だ。
虐げられるものから、虐げるものへ。
腹を括り、開き直ってしまった人間の怖さを改めて感じた。

誰しもが苦しみを抱えて生きている、わけではないのかもしれな

もっとみる
設定が秀逸な警察ミステリー 「キツネ狩り」

設定が秀逸な警察ミステリー 「キツネ狩り」

寺嶌曜さんの「キツネ狩り」を読みました。

主人公の右眼が3年前のシーンを映し出すという設定で、目に見えているのに実際には捕まえることができない。とても面白い設定だなと思いました。

シーン展開がとてもスリリングで、最後までワクワクして読み進めてしまいました。

続編、映像化も期待される、とても素晴らしい作品だと思います。
みなさん是非読んでみてください!

是非映像化して欲しいスリリング・アウトロー・ミステリー 〜「60%」を読みました。〜

是非映像化して欲しいスリリング・アウトロー・ミステリー 〜「60%」を読みました。〜

柴田祐紀さんの「60%」を読みました。

スリリングなミステリーで楽しく読めました。
そして登場人物たちがみんなかっこいいです。
是非映画化して、イケメン俳優たちに演じてほしいなと思いました。

文字を読んでいるだけなのに、自動的に脳内で映像が生まれ、物語をより深く味わうことができる。

読書の楽しさを改めて感じさせてくれる一冊でした。
是非読んでみてくださいね!

研ぎ澄まされたバリおしゃれミステリー  〜「汚れた手をそこで拭かない」〜

研ぎ澄まされたバリおしゃれミステリー 〜「汚れた手をそこで拭かない」〜

芦沢央さんの「汚れた手をそこで拭かない」を読みました。

5つの短編ミステリーが収録されていますが、どれもがとても面白く、そしておしゃれです。

人間の汚さや美しくはない場面を描いているのに、それがなぜだかおしゃれに感じられます。
伏線の張り巡らせ方もとても綺麗で、こんなに短い物語の中によくこんなにエッセンスを詰め込めるなぁと、唸ってしまいました。

タイトルもおしゃれだし、表紙もおしゃれです。

もっとみる