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脇役の一言が生きる勇気をくれるという小説の醍醐味 〜「木挽町のあだ討ち」を読んで〜

永井紗耶子さんの「木挽町のあだ討ち」を読んだ。

面白い。
ミステリーとして素晴らしいし、タイトル回収の美しさに清々しい読後感を味わえた。

時代小説はちょっとなぁ‥と言う人も、騙されたと思って最後まで読んで欲しい。
実際私も、読み始めこそ時代小説特有の文章なら馴染めなかったが、今は本当に最後まで良かったなと思えている。

物語は「あだ討ち」の謎を巡って目撃者にインタビューをする形で進む。
それぞれの人が語るストーリーに出てくるちょい役、いわば「脇役」の言葉が、なぜだか心に残っている。

読書の醍醐味って、これだよなと思う。
ストーリーの本線とは関係ない部分の何気ない言葉で、人生のヒントをもらえたりする。
それを誰が言ってたとかどんなシーンとか忘れてしまっても、確かにその一文が、私の血肉となって人生に影響を与えてくれる。

以下に、私の中でクリティカルに響いた二つの言葉を紹介したい。

①「人を見下す野郎だっていずれ骨になる」

第三章で出てくる言葉。
すごく勇気をもらえるのは、きっと私だけじゃないはず。

所詮みんないずれは骨。
だから人の目なんて気にしなくていいし、骨になるまでの与えられた時間を好きなことやって過ごせばいい。

いずれ骨になるという事実は、何よりの免罪符だ。
焼けばただの骨。気楽に生きよう。


②「面白がったらええんちゃいますか?」

第五章で出てくる言葉。
ほんとその通り。面白くないと嘆くのではなく、面白がっていけばいいし、いくしかないんだと思う。

同時に、「面白がるには覚悟がいるんです」ということも言っていた。
生きてる気がしない。虚しい。
だったらもう腹を括って、面白がるしかない。

覚悟を決める勇気をくれた、力強い一言だ。


【まとめ】どうせ最後は骨だから、人生を面白がる。そんな覚悟を持って生きていく。

時代小説。ミステリー。
この物語が素晴らしいことは間違いないが、読後にこんな感想を抱くことになるとは思ってもいなかった。

そして、この心に残る言葉を与えてくれたのが、主役級の登場人物であることが面白くて仕方ない。
この脇役たちとの出会いに心から感謝しているし、この出会いを生んでくれた筆者に感謝したい。

これからも本を読もう。
こんな素晴らしい出会いがあるから、物語を読むことをやめられない。
ありがとう。
骨になるまで、本を読み続けて人生を面白がっていこうと思う。

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