あなたがあなたでいることが何より尊い【短編小説】
「しんどい」
と私がそう彼に告げた時、
「別に誰に何と言われたって生きているってのはそれだけで尊いことだよ」
と言ってくれた。
先輩に愚痴を言われて苦しくなった。言われたことができない自分を、私自身がで追い詰めていくことに、少し嫌気がさしていたのもあるかもしれない。
「生きていることが尊い」というのは彼の決まり文句だった。
生まれてから、あまり人から認めてこられなかった私は、その言葉が私に向けられているという事実が何よりも嬉しかった。いつも「ありがとう」と言うと彼が笑っ