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遠くの部屋

ふりかえると燃えるような夕焼けだったから、帰路を急ぐ女の子の足はとまった。

この夕焼けを見るのはなんどめ?
女の子は以前にもこれとまったく同じ夕焼けを見たことがあると思った。かつても自分はこの赤い空の下に同じように立っていたことがあるような気がした。言わずもがな夕方は一日に一遍必ず訪れるけれど毎度違うもの。同じだなんてありえない。どうしてそんなふうに感じるのか、自分でも不思議だった。

最近の女の子のたのしみといえば、こうして川沿いの青々とした草みちを自転車で走っていくことくらい。この頃は目をさますと朝になっているのが本当につらかった。このままではじきに家に着いて、すぐにまた次の朝がやってきてしまう。そのことがわかりきっていたから、女の子は家に帰りたくなかった。

足元に一枚、きれいな葉っぱが落ちていた。この夕方みたいに赤い色をしている。女の子は葉っぱをひょいと拾い上げ、持っている手提げの中から手帳を取り出すと、後ろの方のページにはさんだ。それは女の子にとってしるしのようなものだった。これを見たらきっと今の時間をおもいだせるように。

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