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詩集 第7部

30
今まで書いた詩をまとめました。
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記事一覧

【詩】病床

【詩】病床

風邪をひいた朝は
まぶしすぎて ひどいひどい
頭がおもく 地蔵のよう
からだは蒸されて
あつくてさむい
薬をのんだら よいよいよい
くるくる混濁 咳ばらい

【詩】あまたのひとつ

【詩】あまたのひとつ

紙とペンだけで
なにができるのだろう。
書いた詩は
証明した物語は
掌のしわよりふえた。
そしてなにがかわったのだ。
ふと月夜の晩に考えた。
その日は秋で
風邪をひくぐらい寒くて
ひとりだった。

その詩は自分のためなり
その文学は自分のためなり

正しい、正しい、
正しくてしょうがない。
でも
一万枚書いたうちの
一枚、二枚でも
誰かに安らぎをあたえる
それができたら
僕は
君より、正直な人だ。

【詩】猫と月

【詩】猫と月

夜道を歩む
街灯の明かりは蛍火か
時間はすすみ 飯はさめ
星月のしたで 跡をのこす
あの娘はきっと 猫
車にはねられてしまえよ
あの娘はきっと 猫

【詩】夜道

【詩】夜道

夜は無人という
電灯の明かりだけが手がかりで
月の明かりは御無用です

夜は無人という
己の意思だけはすてないで
みえざる者は御無用です

夜は無人という
車の走音だけが安寧で
耳なりの地震は御無用です

夜は無人という
虫の宴会だけは楽しみで
戦闘機の爆撃は御無用です

【詩】こがらし

【詩】こがらし

秋はわびしい
おちばが はらりと
松の木 ちりちり

秋はさみしい
夏風 さよなら
こがらし どうも

秋はたのしい
赤くいろづく 果実たち
冬のおとずれ 七輪の煙

【詩】紅葉

【詩】紅葉

さむくなったね
ええそうだね
紅い葉の雨 ふる並木
あいだあいだの 木立から
あさい陽の光がさしている
並木の影が星のよう

秋の風は かわいていて
ふたりで肩をならべ 歩いても
へだたりがあるよう
心がつめたい

【詩】白雪

【詩】白雪

白雪の朝 ほとぼりつかず
つららのからだで 窓をみる
家の屋根に 岩のような雪
山々に 川のような雪原

靴はひとつ 雪解けの跡を
結露のしずくが 涙のよう
ひとりさむく 火でもくべて
小声ながらまつの
くちびるはさかむけ

【詩】鯖

【詩】鯖

鯖は青くて 包丁のよう
青い絵の具を 蛇行した
腹に波が描かれて
閃光のように 目をひとさし

箸をいれて
ひとくちたべて
脂と塩味をひろがして
白米とともに
腹をみたす

嫌いになったのは
十代の夏
うたがいもなく
ひとくちたべて
脂と塩味がひろがって
白米とともに
腹をめぐり
胸やきげして
気分が悪くなった
鯖は青い

【詩】夜の波間

【詩】夜の波間

私の平穏がなくなるとき
夜の波間 仕度はおわり
はげしい命が あばれだす
鮮やかな命と 初老の命
あらそいあっても なにも生まん
雷 地震 放火 豪雨
どれもちがう
どれもちがう
そんな大層なものじゃない
家が崩壊 いましがた
それはいつも
夜の波間

【詩】問答

【詩】問答

秋の夕暮れに
からす カアとないて
すすき道が ゾワッとゆれる
かえす言葉はない

秋の夕暮れに
からす ガアとないて
稲畑が ザラッとゆれる
みつめる先がない

秋の夕暮れに
からす カアカアないて
松の木が ミシッとゆれる
みたす幸福がない

秋の夕暮れに
からす ガアガアないて
柳の髪が サアッとゆれる
帰路は延々とつづく

【詩】ひとり雨

【詩】ひとり雨

雨の日の朝は ひとり
雨の小槍のうつおとが
頭痛とともに目覚めおき
乾いた喉で ことはじめ
さみしい足どりで向かへば
家族はいない
家族はいない

【詩】散歩道

【詩】散歩道

ふみしめてゆく 秋の道
落ち葉が朝からたむろして
シャクシャク カラカラ
遊びだす
なかむつまじい その姿
ほほえみ木のした くぐっては
ひらりりらりと
内気な落ち葉が 舞いおりる

【詩】ひと夏のあせ

【詩】ひと夏のあせ

さっそうとゆく 田舎自転車
子どもたちは からかい追いかけ
夏のすずしさを手にいれる
お金もないよな土地だから
青空そよそよ すすんでいる

白卵ひとつで いっぽんをくれ
赤卵ふたつで にほんをくれ
こんなに汗をかいたんだ
これは褒美とおもいたい
きらきらひかる アイスキャンディ