
アトピー周辺知識41 : 5-HTP・セロトニン欠乏
最近トリプトファン・メラトニンの摂取を暫く続け、その甲斐もあり睡眠障害は改善された。ただ本命のアトピーに対してはノイロトロピン程の効果は無く、より効き目を求めて5-HTPも追加で飲むようにした所、急に日中の痒みが引き始め皮膚修復までもが進み出した。
正直余り期待していなかったが摂取したのが5-HTPという事で、トリプトファンでもメラトニンでも無く、セロトニンがアレルギーやアトピーに対して効果的に働いている疑いが濃厚となった。
・セロトニンの抗アレルギー・皮膚修復促進作用
セロトニン含めトリプトファン代謝産物のアレルギーやアトピーに対する効果についての研究が少なく、医療関係者がその事に言及しているものもほぼ見ない。
取り敢えずセロトニンがサイトカイン産生を阻害し炎症の抑制に働く事、皮膚疾患などの慢性炎症に対応して患部にて増加し症状を抑制する役割を担っている事は報告されている。
セロトニンがアポトーシスを減少させ、ヒト線維芽細胞と新生児の角化細胞で有意に増加したことを明らかにしました。細胞の増殖も両方の細胞タイプで大幅に増加しました。さらに、セロトニン刺激は細胞の移動を著しく加速し、その結果、ヒト新生児の角化細胞および線維芽細胞培養のスクラッチゾーンが狭くなりました。一方、フルオキセチン(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)とケタンセリン(セロトニン受容体2A阻害剤)はこれらの効果を逆転させました。SCALD燃焼マウスモデル(総体表面積20%)は、内因性セロトニンがコントロールグループの創傷治癒プロセスを改善したのに対し、フルオキセチンとケタンセリン処理(内因性セロトニン刺激の破壊者)は、再表現性が低く、創傷サイズが大きく、アルファ平滑筋が高いことを示しました。アクチン(α-SMA)カウント。これらの兆候はすべて、長期の分化状態を指し、最終的には傷の癒しの結果が悪いことを示します。集合的に、データは、内因性セロトニン経路が皮膚の創傷治癒プロセスの調節に寄与することを示しました。したがって、この研究の結果は、火傷患者の皮膚治癒を強化するための潜在的な治療候補としてのセロトニンの重要性を意味します。
やはりセロトニンには皮膚の創傷治癒プロセスに関わり皮膚修復を促進する役割があり、併せて患部の炎症を抑制してもいる様である。セロトニンには痛みを緩和する作用も有るため、外傷に対する対処全般を担うホルモンという事なのだろう。
アトピー性皮膚炎において皮膚修復が遅い事も、アレルギー性疾患特有の内分泌障害によるセロトニン産生の低下が影響している事だろう。ただ慢性炎症に対しての影響がどの程度のものなのかは現状研究が少なくはっきりとしない。
体感では5-HTP摂取によりノイロトロピンと少なくとも同等程度は効果を感じたので、アトピー性皮膚炎患者のセロトニン産生低下の事実も有り、重要な一端を担っているものと思われる。
ただセロトニンはその覚醒作用故に日中しか効果を期待出来ず、夜間コルチゾール分泌の滞る時間帯にどうしてもアレルギー症状の抑制が効きにくい状態が生まれてしまう。そのためその時間帯をノイロトロピンや外用薬、その他水素療法等の抗酸化作用で如何にしてカバーするかが引き続き課題に残る。
アトピー性皮膚炎の治療において重要な役割を担うと目される5-HTPとセロトニンだが、実際の所は研究が進展しない事には明確にならないため、漸く注目され始めた分野という事もあり今後の研究動向を期待しながら注視して行きたい。
・セロトニン産生と日光・紫外線
…アトピーの治療に紫外線や日光浴・海水浴が有効な事も、紫外線によるセロトニン産生の増加が理由になっているのかもしれない。特に児童は紫外線に対するセロトニン産生増加の反応が強いため、小児においてならば日光浴はアトピー治療の割と有望な選択肢になり得るか…(セロトニン産生の滞る冬季生まれの子供にアレルギー児が多いのもそれが原因の一つだろうか)。また日光浴によるビタミンDの合成もセロトニン産生を亢進させる。

どうやら日光浴や紫外線による改善にはセロトニンだけでなくトリプトファン自体も強く関与しているらしい。
アトピーはアジア圏だけでなく北欧でも多いという話だが、社会保険の在り方による抗菌薬の不適正使用だけでなく、北欧特有のセロトニン欠乏症もアトピーの発症増加に関わっている可能性は高いだろう(欧州にも関わらずアトピーが多い事に疑問はあったが漸く合点がいった、北欧は鬱病が多い事も有名である)。
またアトピーが東南アジアや沖縄など南国で治る理由にも、日照の強さや日照時間の長さ、薄着により紫外線を肌に浴び易い事が含まれていると思われる(ミネラルやビタミン摂取の容易さに併せて)。
そもそも一般にアトピーは冬季に悪化するものであるが、乾燥・寒さやコルチゾールの分泌減少だけでなくセロトニンの分泌減少が大きくそれに影響していた様である。

・セロトニンと精神疾患
また体内でのセロトニン産生が増した結果、ついでに精神が安定しストレスも軽減された。ストレスの軽減と言われても実感が無ければ正直ピンとこないものだが、体感すると確かに些末な事が殆んど気にならなくなり、不必要な精神の抑揚が消える感覚が有った(たまに妙に太い神経を持った人物が居るが、そういう人物も肝が据わっているかセロトニンに満ち満ちている人間なのかもしれない)。
たまに聞くストレスや悩みによりアトピーが悪化した等、メンタルとアトピー症状の関係性もセロトニンにより説明が付く。ストレスとアレルギーの双方からコルチゾールの分泌が促され副腎疲労となり、コルチゾール過多からセロトニンの分泌は抑制されてアレルギー抑制と皮膚修復がままならない状態となる。
アトピーに神経質な人間が多いのも皮膚症状から来るストレスだけでなく、内分泌障害としてのセロトニン不足による影響が大きいと思われる。
実際アトピー性皮膚炎患者の多い国や増加傾向にある国は、大うつ病や冬季うつ病の多い国と重なる場合が多い。鬱病に罹りやすい環境や体質はアトピーやアレルギー疾患の発症因子と捉えて良いだろう。
よく女性はストレスで肌荒れしやすいと言われるが、元々女性はセロトニン分泌が男性より少ない上に表皮も薄く、ストレスなどによるセロトニン分泌減少の悪影響が肌荒れという形で表出化しやすいがための現象だと思われる。この点アトピー性皮膚炎患者と似た性質を持つと言える。
アトピーの治し方は人それぞれとの意見も有るが、結局どれも根本に有るのは胃腸障害であり腸内細菌叢のディスバイオシス、それ一つの様である。
・セロトニンと栄養療法
5-HTPにはセロトニン濃度を数倍に上げる効果がある反面、取り過ぎれば副作用も有る様なので過剰摂取には一応の注意が必要か。そもそも取り過ぎで即頭痛に繋がるので、一日50mg以下から試すのが無難だろう(何なら一日25mg以下から始めた方がより安心か、それでも駄目ならトリプトファンとビタミンB6・ピペリンの摂取が最も安全な選択肢となる)。
セロトニンはメラトニン同様、ホルモン故に効果は非常に高いが副作用も出易く、体質に併せて繊細な量の調整が必要な印象である(この点コルチゾールやステロイド薬も本来同様の筈である)。また副作用という程の事でも無いが、セロトニンの分泌増加で耳鳴りの様な症状が起きる事もある。
ある意味アレルギー性疾患故の内分泌障害に対し、コルチゾールの分泌過多をセロトニン原料補充によりバランスを取る、一種のホルモン補充療法と捉えても良いかもしれない(そもそも栄養を元にホルモンは作られるので栄養療法≒ホルモン補充療法というのは当然と言えば当然か、何よりビタミンは体内合成出来ないホルモンとも言われる)。
…アレルギーや糖尿病・慢性疲労だけでなく、昨今の精神疾患や睡眠障害・不眠症・片頭痛増加の背景にも腸内細菌叢のディスバイオシスが絡んでいる可能性は高そうである。そしてそれらの幅広い慢性疾患群による悪影響は、若者や現役世代ほど強く受けている事になる。
・追記
・酪酸菌とトリプトファン
両者に何かしらの関わりは有ると思っていたが、酪酸にはトリプトファンの吸収を促進する作用が有るとの事である。
・抗菌薬適正使用推進の比較
…にしても世界有数の冬季うつ発症国であるスウェーデンと世界有数の不安遺伝子保有国である日本、アトピーの発症率2トップであるニ国が環境或いは体質からセロトニン欠乏に陥り易いという共通点を抱えているのは決して無視出来ない事実だろう。加えて抗菌薬不適正使用の多い公的保険制度においても共通している(腸内細菌叢のディスバイオシスによりトリプトファン代謝産物としてのセロトニン欠乏に繋がる)。
スウェーデンでは早くから抗菌薬適正使用推進の試みが講じられ、結果としてアトピー性皮膚炎患者も減少してきている。
日本でもここ十年ほどで随分と遅ればせながら推進し始めたそうだが、それが実を結ぶまでどれだけかかるだろうか(何よりあくまで耐性菌発生抑制を中心に据えて、アレルギーやアトピーの発症抑止にはなっても治療に結び付ける動きでは無い事が気にかかる)。スウェーデンに比べて日本では抗菌薬不適正使用の害に対する周知が全く進んでおらず、日本でも医療過誤に関わる情報は隠すのでなく広く共有すべきだろう。
一方で、日本の一般市民における抗菌薬への正しい理解の普及は、今後の大きな課題となっています。AMR臨床レファレンスセンターが2021年に行った調査によると、「抗菌薬・抗生物質はかぜに効く」ことを間違いであると正しく回答した人の割合は60代では31%、20代では18%でした[xii]。この割合はスウェーデン(約80%)やオランダ(約50%)に比べると低い値となっています。