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水木三甫の短編小説よりも短い作り話

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自著の超短編小説(ショート・ショート)をまとめました。 ユーモアあり、ブラックあり、ほのぼのあり、ホラーらしきものあり、童話らしきものあり、皮肉めいたものあり、オチのあるものあり…
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#超短篇小説

ホラー浦島太郎(超短篇小説)

ホラー浦島太郎(超短篇小説)

亀を助けた浦島太郎は、竜宮城に招待されました。それはそれは絵にも描けない美しさでした。まあ、もともと浦島太郎に絵を描く才能などありませんでしたけど。
タイやヒラメの舞い踊り、美人姫君からは酒を注がれます。楽しい宴会が続きます。
「何か食べたいものがありますか?」
姫の問いに浦島太郎は「せっかく海にいるのだから、新鮮な魚が食べたい」と言いました。タイやヒラメの顔色が真っ青になりました。
次の日、砂浜

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後ろ向き吾郎の伝説(超短篇小説)

後ろ向き吾郎の伝説(超短篇小説)

皆さんは、後ろ向き吾郎という都市伝説を知っているだろうか。
都会を後ろ向きに歩き彷徨っているという男の伝説た。
実は、私が小さい頃、一度だけ後ろ向き吾郎に出会ったことがある。どうして後ろ向きに歩くのか聞いてみたら
「人生、過去は見えるが、未来は見えない。前を向いて歩いても先は見えないんだよ」
と言われた。
納得できずに見送る私を、後ろ向き吾郎は手を振りながら遠ざかっていった。
それきり後ろ向き吾郎

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二日酔いとお婆さん(超短篇小説)

前の日に飲みすぎた若いサラリーマン。通勤電車の山の手線で座っていると、目の前にお婆さんが立っていた。
サラリーマンは
「どうぞ」
とお婆さんに席を譲った。お婆さんは、
「すぐに降りますから」
と言って席を譲られるのを断った。
内心ホッとしてそのまま座っていると、ある学生が席から立ち上がり、お婆さんに
「どうぞ」
と席を譲った。どうせすぐ降りるのにと思っていたら、お婆さんは
「ありがとうございます」

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白雪姫なんて知らない(超短篇小説)

白雪姫なんて知らない(超短篇小説)

「鏡よ鏡よ鏡さん、世界で一番美しいのはだーれ?」
白雪姫の継母が魔法の鏡に向かって聞きました。
「それはあなたです」
魔法の鏡が言いました。
継母はそれを聞いて大満足するのが、寝る前のひとつの儀式になっていました。
「鏡よ鏡よ鏡さん、世界で一番美しいのはだーれ?」
「それはあなたです」
しかし、いつも同じ質問ばかりでは、魔法の鏡も飽きてしまいます。
そして今日も、
「鏡よ鏡よ鏡さん、世界で一番美し

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夢追い人(超短篇小説或いは長編小説の始まり)

夢追い人(超短篇小説或いは長編小説の始まり)

東京は夢の廃棄場所だ。

東京の街は叶えられなかった夢や、忘れられた夢、あきらめた夢で溢れかえっている。そんな夢のゴミ溜めに、それでも人々は競馬場に落ちている馬券の中から当たり券を探すように、まだ拾えるかもしれない夢を探しもがいている。

古い羽根を捨て去った鳥は身も軽く飛んでいくと言う。だから俺は10年暮らしたこの街東京を出る決心をした。しがみついた過去の夢をすべて捨て去って。

捨てられた夢の

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ゲーム好きな少年たち(超短篇小説)

ゲーム好きな少年たち(超短篇小説)

大人たちの嘆き

「最近の子供たちはゲームばかりして、世間の役に立とうと思っている者など一人もいないのではないか。私たちの時代は若い者は自分の命を捨てでも日本を守ろうとしていたというのに」

そして10年後、戦争が始まった。
日本は連勝に連勝を重ね、敵国に勝利した。
中でも一番活躍したのは昔ゲームばかりしていた若者たちだった。
戦争は今や、国内にいながら無人飛行機を飛ばし、あるいはロボットを操縦し

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1+1=1の話(超短篇小説)

1+1=1の話(超短篇小説)

小学校に通い始めたばかりの息子が、学校から不満顔で帰ってきた。

ママ「あら、どうしたの? そんな不機嫌な顔して」
息子「今日算数を習ったんだ」
ママ「それで?」
息子「1に1を加えたらいくつになりますかって聞かれたから1だって答えたんだ」
ママ「あら、1+1=2でしょ」
息子「違うよ。コーラにコーラを足しても、それはコーラだし、醤油に醤油を入れても、それはただの醤油でしょ。同じモノを加えたって違

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ストローの恋(超短篇小説)

ストローの恋(超短篇小説)

若いカップルがカフェのテーブルで、ひとつのグラスにストロー2本、レモネードを飲んでいた。男の人は青いストロー、女の人は赤いストローで。

青いストローがため息をついた。
赤いストローが「どうしたの?」と尋ねた。
「若いカップルがうらやましい。僕も恋をしてみたい」と青いストロー。
「それならば私が恋の相手になってあげる」と赤いストローが言った。
「ありがとう。でも僕らのあいだには氷が入っていて、キズ

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無実の罪(超短篇小説)

無実の罪(超短篇小説)

13段の階段をゆっくり昇る。
頂上に着く。
首に縄が掛けられる。
地面が割れて、体が下に落ちていく。
「やめてくれ。俺は無実なんだ」
俺は心の中で叫ぶ。
そして俺は目を開ける。
そんな場面が何度も繰り返される。

初めてジェットコースターに乗っ
ときの感想でした。

殺人事件?(超短篇小説)

殺人事件?(超短篇小説)

パパが自宅マンションに帰ってくる。
ドアの前で泣いている5歳の娘。
パパ「どうしたの?」
娘「ママが死んでるの」
パパがドアを開けると、廊下にママが血だらけで倒れている。
驚くパパ。
「どうしたんですか? 何かありましたか?」
警官が非常階段を上がってくる。
パパ「妻が殺されていて・・・」
警官「とにかく中に入りましょう」
警官がドアを閉める。
警官「誰が見つけたの?」
パパ「私の娘が」
警官「犯

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金魚が降った日(超短篇小説)

金魚が降った日(超短篇小説)

屋台の金魚掬いは子どもたちで賑わっていた。
金魚は子どもたちの持つポイから逃れようと必死に泳いでいる。でも四角い箱の中では金魚同士がぶつかり合い、身動きが取れなくなり、結局はポイの中に入れられてしまう。
毎回こんなことではたまったものどはない。金魚たちは考えた。
ヒレを大きくして空を飛ぼう。そうすればポイに捕まることはない。
金魚たちはヒレをどんどん大きくした。
そしてとうとう狭い金魚掬いの箱の中

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湯気(超短篇小説)

湯気(超短篇小説)

コーヒーの湯気がハテナマークに見えた。
コーヒーは何に疑問を持ったのだろうか?
「ここはどこ?」
「なんでここにいるの?」
あるいは「私を飲むのは誰?」
そんなことを考えているうちに、湯気は消えてなくなった。
コーヒーはすでに冷めていた。
季節もやっと寒くなってきた。

サンタクロースは準備中(超短篇小説)

サンタクロースは準備中(超短篇小説)

サンタクロースはすでにクリスマスプレゼントを買うための資金集めをしている。
スーツ姿で金持ちの家を回って寄付してもらうのだ。
アメリカの金持ちはたくさんのお金を寄付してくれた。
台湾の金持ちは人々にも働きかけ、みんなで貯めたお金をたくさん寄付してくれた。
日本の金持ちは・・・・・門前払いにしたらしい。

夢みたいな夢を見た(超短篇小説)

夢みたいな夢を見た(超短篇小説)

夢みたいな夢を見た。

僕は空を飛び回り、海深く潜り込む。
火山の噴火口から地球の中心目がけて、マグマの中を泳ぐ。
マグマの中では汗をかかない。汗がすぐをマグマの熱で蒸発してしまうから。
体の水分が全部抜けそうになったので、僕は噴火口から飛び出して、真下にある湖に飛び込んだ。気持ちが良かった。サウナってこういうもんなのかな。体中の皮膚が湖の水を吸収する。

突然僕はミジンコに変身し、僕の体の中を探

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