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multiplier197
金魚が降った日(超短篇小説)
屋台の金魚掬いは子どもたちで賑わっていた。
金魚は子どもたちの持つポイから逃れようと必死に泳いでいる。でも四角い箱の中では金魚同士がぶつかり合い、身動きが取れなくなり、結局はポイの中に入れられてしまう。
毎回こんなことではたまったものどはない。金魚たちは考えた。
ヒレを大きくして空を飛ぼう。そうすればポイに捕まることはない。
金魚たちはヒレをどんどん大きくした。
そしてとうとう狭い金魚掬いの箱の中から飛び出した。
たくさんの金魚が空に向かって飛んでいくのを、子どもたちだけでなく、金魚掬い屋さんまで驚きながら見つめていた。
しかし、飛ぶには体力が必要だし、体力を保つためには酸素が必要だった。もちろん空中の酸素を吸えない金魚たちは、酸欠に陥り、次から次へと空から落ちた。
隣町では金魚が降ってきたと大騒ぎになった。
テレビカメラまでやってきて、空から落ちてくる金魚を撮影した。
結局空へ飛び立った金魚はみな死んだ。
しかし、これからも縁日が開かれる町では金魚たちが空を飛ぶだろう。