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「……どんな泉だったの?」 自然と、風花の声にも感情がこもった。 「水の精霊の国の、空…
冗談めかす夏澄に、少し泣きたくなった。 ずっと願いが叶わなければ、普通は感情を無くす…
「……わたしもそんな泉をもどす方法、探しに行きたい」 風花はそっといってみる。 「ねえ…
「もしかして、今日も探しに行っていたの?」 「うん、今日は西の山にある洞窟に行ってきた。…
「飛雨、あれやってよ」 ふいに夏澄は笑顔になった。 飛雨に向き直って、すわり直す。 「…
「オレだけにしか、できないんだぜ」 飛雨はなぜか、背筋を伸ばす。 「水をかけるだけなの…
夜空に銀の星が瞬きはじめた。 風花は結界の出口の前に立って、手を振る。 「じゃあ、明後日に。風花」 「うん、また……」 「待ち合わせ場所は、蓮峯山にある一本杉の前ね。飛雨が知っているから」 風花は飛雨の案内で、蓮峯山に行くことになった。なんと、一緒にバスで行く。夏澄たちは人前に出られなくても、黒髪の飛雨なら平気ということだった。 夏澄たちは霊体になって、空から風に乗って行くらしい。 「今なら、結界の外に誰もいない。出て大丈夫だよ、風花」 あたりを見回し
夏澄にいわれ、風花は結界の中で、息を潜めるようにしていた。 「スーフィアさんたち、だい…
落ち着かない様子の夏澄は、林のほうに視線を彷徨わせる。やがてうつむき、ぽつりとつぶやい…
「ど、ど、ど、どうしようっ」 風花は思わず、結界を出ようとした。背後から、夏澄に止めら…
「ここから出ていけば、だいじょうぶだよ」 「ありがとう、夏澄くん」 「じゃあ、今度は蓮峯…
「ローフィ?」 「そんな名前で、呼ばれていた記憶はない?」 夏澄は瞳を伏せて訊いてくる…
海の精霊のスーフィアは、飛雨と並んですわっていた。 石垣の上から、夏澄たちの様子を窺…
夏澄は風花とローフィを重ね、違うと分かり、また絶望したのだろう。 ああなった夏澄に、慰めは無意味だ。 飛雨にもできない。だから、彼はいらいらしている。 それに風花……。風花がローフィのことを知ったら、どう思うだろう。 ローフィは、風花とそっくりな、陽の精霊の少女だ。 夏澄と一緒に、水の精霊の国を元にもどす方法を探していた。そして、なぜか旅の途中で、急にいなくなった。 ローフィは夏澄と同じくらい、水の精霊の国を愛おしんでいた。 だから、自分の意思で