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水の空の物語 第2章 第23話


「ここから出ていけば、だいじょうぶだよ」

「ありがとう、夏澄くん」
「じゃあ、今度は蓮峯山で……」

 夏澄の言葉は途切れた。彼は掴んでいた風花の手を、もう一度強く握る。やがて、ゆっくりと手を離した。

 風花は夏澄を見上げた。
 また、鼓動が速くなってきた。

 風花は夏澄から逃げるように、背を向けて駆け出した。

「月お兄ちゃん、ごめんなさい」

 霊泉を通り過ぎたところで、疲れた顔で夜空を見上げている月夜に、声をかけた。

「迎えに来てくれたの? パパたち、心配してた?」

 月夜はなにも答えない。風花に気づいていないように見えた。

「お兄ちゃん?」

 風花は足を止める。夏澄を振りかえった。
 夏澄がなぜかまだ、幻術を解いていないと気づいた。

「……風花っ」

 夏澄が顔をあげた。ゆっくりと弧を描いて、風花のとなりに跳躍する

 続いて、『ローフィ』と、緊張を孕んだ声でいった。




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