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水の空の物語 第2章 第17話

「飛雨、あれやってよ」

 ふいに夏澄は笑顔になった。 飛雨に向き直って、すわり直す。

「いいよーっ」

 飛雨は満面の笑みを浮かべた。さっと立ちあがると、霊泉の中に両手を入れる。

 霊泉の水を掬い、宙めがけて水を撒いた。

 撒かれた水は、いくつもの丸い粒になって落ちてくる。うちの少しが夏澄にかかった。夏澄はあははとわらい、気持ちよさそうに瞳を閉じる。

 一瞬、なにをしているのか分からなかった。風花はじっと夏澄を見つめる。

 実は、風花もあんな雨を降らせるような水浴びは好きだ。

 だか目立つから、人前ではあまりできないでいた。

 自分ができなかったことを、簡単にする相手を見るのは、ふしぎな気分だ。

「今のは、夏澄の心を癒やしたんだよっ」

 飛雨が自慢げに声をあげる。

「木の病気を癒やすのに消耗した体力は、スーフィアや霊泉が癒せるけど、心は癒せないんだ。風花のいうとおり、夏澄は優しいから、いつも、つらい思いをしてるんだよ」

 飛雨はもう一度、夏澄に水をかけた。

 夏澄は心底うれしそうにする。水の精霊だからだろうか。

「ありがとう、飛雨。今度は俺が飛雨を癒やすよ」

「だいじょうぶ。夏澄はすわってて」

 水の粒は、夕方の儚い光の中でも、きらきら輝く。

 落ちていって、夏澄の肩や水色の髪で弾ける。

 雫になって流れる粒も、細かくなって、髪に留まる粒もあった。




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