水の空の物語 第2章 第19話
夜空に銀の星が瞬きはじめた。
風花は結界の出口の前に立って、手を振る。
「じゃあ、明後日に。風花」
「うん、また……」
「待ち合わせ場所は、蓮峯山にある一本杉の前ね。飛雨が知っているから」
風花は飛雨の案内で、蓮峯山に行くことになった。なんと、一緒にバスで行く。夏澄たちは人前に出られなくても、黒髪の飛雨なら平気ということだった。
夏澄たちは霊体になって、空から風に乗って行くらしい。
「今なら、結界の外に誰もいない。出て大丈夫だよ、風花」
あたりを見回していた夏澄がいった。その夏澄が、あれ、と、不意に頬に緊張を走らせる。
素早く、背後の林を振り返った。
「今、外で精霊の気配がして、すぐに消えた」「え!?」
飛雨とスーフィアが顔を見合わせる。
「私が見てくる」
いったスーフィアが、途端に姿を消した。飛雨は身構えて、林を探るように視線を彷徨わせる。
刺されるような時間が過ぎたあと、スーフィアが、また結界の中に姿を現した。
「林の中を巡ってきたけど、誰もいなかったわ。精霊はもちろん、人も」
いうスーフィアだが、まだ不安気にしている。
「そう、だった……?」
夏澄も釈然としないようだった。
「私、もう一度見てくる。風花、わるいけど、もうちょっとここにいてくれる?」
「オレも行く」
スーフィアに次いで、飛雨も結界を出ていった。
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