水の空の物語 第2章 第14話
冗談めかす夏澄に、少し泣きたくなった。
ずっと願いが叶わなければ、普通は感情を無くすと思う。
それなのに夏澄くんはよくわらったり、泣いたりする。
……夏澄くんは、思ったよりずっと強いんだ。
「ねえ、夏澄くん」
夏澄くんは、悲しい? つらい?
風花は言葉にできなかった。聞いたら、なにかが壊れてしまいそうだった。
深呼吸して、風花は声を明るくした。
「空の泉って……」
「なに? 風花」
夏澄は、頭を霧にもたせかける。
「空の泉って、どんな色だったの? 地上から見えたの?」
「雲よりも高いところにあるから、あんまり。でも、風が強い日にね泉が波立って、きらきら輝くのは見えたよ。ああ、あと、泉があるから、国の空は透きとおった濃い青色だったよ」
透きとおった濃い青の、きらきら輝く空。
想像するだけでまぶしいと、風花は思った。
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