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水の空の物語 第2章 第25話

 海の精霊のスーフィアは、飛雨と並んですわっていた。

 石垣の上から、夏澄たちの様子を窺っている。
 霊泉の北にある、段々畑の石垣だ。

 夏澄は風花を置き去りにして、結界にもどってしまった。

 風花は大木の根元でぼんやりしている。

 『ローフィ……』

 愛おしそうに、大事なあの娘の名を呼んだ夏澄の言葉が、胸に刺さる。

 夏澄はどうしても、風花とローフィを重ねてしまうんだろう。

「おい、どうするんだよっ」
 飛雨が喚いた。思い切り機嫌がわるくなっている。

 精霊を捜して、山まで行ったスーフィアだったが、結局、微塵も気配を感じられなかった。仕方なくもどってくると、飛雨がなぜか石垣の上にいた。

 遠くから、夏澄たちを見ていた。

 夏澄の様子がおかしかったからだ。
 挙動不審といってもいいくらい、行動が不自然だった。

 おまけに、風花の兄という少年もいた。

「どうするんだよ、スーフィア」
「なにが?」

「だから、夏澄は風花をローフィさんだと思ってるんだぞ。どうするんだよ」

 本当に。

 スーフィアは暗澹とした。



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