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水の空の物語 第1章 春の出逢いと夢のはじまり

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第一章をまとめました、 主人公の風花と、水の精霊、夏澄の出逢いの章です。 春の川原でのことです。
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水の空の物語 第1章 第2話

水の空の物語 第1章 第2話

第一章 春の出逢いと夢のはじまり

 高校からの帰り道、│波木《なみき》│風花《ふうか》はいつもの川原に寄り道した。

 花がいっぱいの、優しい場所なのだ。 春の花があふれている。

 土手に広がる菜の花。

 小さくてかわいい花。ほとけのざ、すずめのえんどうに、たんぽぽ。
 川岸には大きく枝を広げ、しっかりと根を下ろす桜の木。

 風花は土手を駆け下り、桜を見上げた。ちょうど漫開だ。花びらがひら

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水の空の物語 第1章 第3話

水の空の物語 第1章 第3話

 根元から見る桜色の花びら。

 その向こうの青空。川原で揺れる水面。跳ねあがった水しぶきを留める青葉。

 この世はきらきらであふれている。きらきらを見れば、心が救われる。

 この世の中は悲しいことはかりだ。

 その悲しさがなくなることはない。だからこそ、光を見ていたい。

 風花は耳を澄ませて、川の流れの水音を聞く。水音もきらめいていた。

 風花は長い間、ひたすらきらきらを感じた。気がつ

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水の空の物語 第1章 第4話

水の空の物語 第1章 第4話

 なんて、きれいなんだろう。

 風花はまっすぐに想った。

 枝に隠れてよく見えないが、彼は西洋の神話のような白い服を着ている。

 その周りはきらきら輝いていた。舞いあがる水が、彼を包むように踊っているのだ。

 まるで、護っているようだった。

 ふしぎなふしぎな風景だ。……そして、そばにいるだけで浄められる気がした。

 泉のような色をした澄んだ瞳。うれしげに水面を見つめる表情。

 流れ

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水の空の物語 第1章 第6話

水の空の物語 第1章 第6話

「落ち着いて、飛雨。どうせ、すぐに後悔するんだから」

 彼女も精霊?

 少女は高校生くらいだった。

 腰まである長い金の髪に、海のような深い青の瞳。大人びた雰囲気。
 風が吹くと、髪がやわらかくなびく。衣と一緒にさらさら揺れた。

 彼女も夏澄と同じで、なにか浄らかなふしぎさがあった。

「ごめんなさいね、風花」

「なんで、わたしの名前……」

「私たち、本当に何度も会っているのよ。私はス

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水の空の物語 第1章 第9話

水の空の物語 第1章 第9話

 確かに風花は水辺が好きだ。

 学校帰りに通るこの川原、愛犬の散歩で行く池のある公園。この辺りで一番澄んだ水が湧く湧水群も、たまに行く。

 そこに本当に夏澄くんがいたの……? 

 やっぱりあんな風に優しく、水面を見ていたの?

 想像すると、どきっとした。

 遠くに立つ夏澄を見ると、体がふわふわ浮かぶように気が昂ぶる。

 わたし、今本当に精霊と一緒にいるんだ。

 風花はひざを抱え、夏澄

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水の空の物語 第1章 第10話

水の空の物語 第1章 第10話

 こうやって彼らの隣にいるだけで、風花の心まで澄んでいくようだった。

 ゆらゆら心が揺れる。

「ねえ、スーフィアさん!」

 風花はくるっとスーフィアに向きなおった。

「初めて逢った時のこと、もっと教えてっ」

 訊いたとき、スーフィアは、風花に半分背を向けていた。

 川下の夏澄を心配気に見つめている。

「ごめんね、風花。ちょっとよそ見……。あのときは……、あっ、なんか今日とそっくりだっ

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水の空の物語 第1章 第11話

水の空の物語 第1章 第11話

 海の精霊のスーフィアは、静かにため息をつく。

 風花の言葉を少し寂しく思った。

 風花の記憶を消したのは自分たちだ。
 それでも、そのことを寂しいと思ってしまう。

 風花は忘れていても、スーフィアは彼女と何度も会っている。その分、親しみがある。

 風花とはいろいろな話をした。

 お互いに好きな海の話で盛り上がったこともあった。

 風花は純粋な子だ。

 人らしい無邪気さも好ましいと思

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水の空の物語 第1章 第12話

水の空の物語 第1章 第12話

 いきなり目の前に立った飛雨に、風花は心底驚いた。

 飛雨は軽く視線を逸らし、小さな声でいう。

「本当に記憶を消していい? 風花」
 ひどく、いいにくそうにつぶやく。さっきと真逆で優しげな口調だ。

「ごめんな、ひどいことして。でも必要なことなんだ。人の世界には想像もできないような、その……、奸賊がいてさ。もし、夏澄のことが人の世界に伝わって、そういう人間に知られたら、夏澄の命が危なくなるんだ

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水の空の物語 第1章 第13話

水の空の物語 第1章 第13話

 目を閉じると、浮かぶのは青い光に包まれていた夏澄だった。

 ダイヤモンドダストのような、ふしぎな水蒸気の中の彼はまぶしかった。

 ……忘れちゃうんだな。
 奇跡みたいだったのに。

 それとも、また逢えるかな。……そんなにうまく行くはずない。きっと二度と逢えない。

「あの、やっぱり待ってくれない?」

 飛雨はぴたっと手を止めた。

「なんていった?」
「だから、記憶消すのやめたい。せめて

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水の空の物語 第1章 第14話

水の空の物語 第1章 第14話

「こ、の、や、ろー!」

「……だ、だ、だって、まだ心の準備ができてないんだもん。せめて、あと三十分くらい」

 風花は後ずさる。
 川原の桜の方に駆けていって、幹に隠れた。

「無理っ。オレ帰るんだ!」

 飛雨はまた、一瞬で風花の隣に立つ。風のように速く走るのだ。
 風花は幹の反対側に回った。

「お願い、飛雨くん。お願いしますっ。もうちょっとだけ!」
「うるせっ」

 飛雨は風花を追いかけ、

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水の空の物語 第1章 第15話

水の空の物語 第1章 第15話

「お、おい、夏澄」

 飛雨が声をうわずらせる。

「出てきたらだめだよ」
「ごめん。でも……」

 夏澄は風花の体を起こし、幹に寄りかかるようにすわらせた。

 擦りむけた風花のひざに手をかざす。すると、なぜか痛みが引いていき、傷も消えていた。

 夏澄はほっとしたように肩の力を抜く。春のように優しく微笑んだ。

「今のは癒しの霊力だよ。初めまして……、でいいかな? 風花」

 近くで見ると、青

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水の空の物語 第1章 第16話

水の空の物語 第1章 第16話

「俺と風花は手前から。飛雨とスーフィアは向こう側から癒そう。飛雨の霊力はスーフィアに送ってくれる?」

 飛雨たちは戸惑い気味だったが、すぐに枝に手を当てる。

 四つの手が枝を包んだ。

「……あの、これってわたしの霊力を、夏澄くんが使っているってことですか?」

「残念だけど、あなたに霊力はないはずよ。気持ちで一緒に癒してくれるだけでも助かるのよ」

 桜の枝が三つの青い光に包まれる。

 夏

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水の空の物語 第1章 第17話

水の空の物語 第1章 第17話

「……ねえ、夏澄。あなたの幻術で、霧の水輪見せてよ」

 唐突にスーフィアがいい、微笑む。夏澄はふしぎそうに彼女を見た。

「なんだか疲れたちゃったの。みんなで気持ちを落ち着けましょう。夏澄は今日ずっと霊力を使っているけど、いいわよね」

 ねだるような瞳でスーフィアは続ける。
 ありがとうと、夏澄は微笑む。祈るように手を胸の前で重ねて、瞳を閉じた。

 ずっと、霊力を使っている……?

 そうい

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水の空の物語 第1章 第18話

水の空の物語 第1章 第18話

 夏澄はしばらくの間、なにかを念じるようにしていた。

 やがて、まぶたを開く。

「あの、スーフィアさん。霧の水輪ってなんですか?」

「水の精霊の国の自然現象よ。霧が水の輪になって舞うの。無二の光景なのよ」

 ゆっくりと、辺りに霧が漂いはじめた。
 霧は這うように広がっていく。

 地面に近いほど霧は濃かった。一番濃いところの霧が集まって、水滴に変わっていく。

 それが輪のような形を作りは

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