水の空の物語 第1章 第10話
こうやって彼らの隣にいるだけで、風花の心まで澄んでいくようだった。
ゆらゆら心が揺れる。
「ねえ、スーフィアさん!」
風花はくるっとスーフィアに向きなおった。
「初めて逢った時のこと、もっと教えてっ」
訊いたとき、スーフィアは、風花に半分背を向けていた。
川下の夏澄を心配気に見つめている。
「ごめんね、風花。ちょっとよそ見……。あのときは……、あっ、なんか今日とそっくりだったわよ。風花は土手を降りてきて、アカシアに隠れていた夏澄に気づいたの。おなじすぎて、なんかおかしいわね」
「……」
風花はしゅんとしてしまった。
夏澄たちの気持ちにやっと気づいた。
この出逢いは風花にとって幸運でも、スーフィアたちにとっては違う。
人との出会いなんて、災いでしかないのだ。夏澄はきれいすぎて、人と関わってはいけない。
それは、本当に理解できる。
「スーフィアさん……、いいですよ。わたしの記憶消して」
夏澄を護りたいと風花も強く思った。
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