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水の空の物語 第1章 第6話

「落ち着いて、飛雨。どうせ、すぐに後悔するんだから」

 彼女も精霊?

 少女は高校生くらいだった。

 腰まである長い金の髪に、海のような深い青の瞳。大人びた雰囲気。
 風が吹くと、髪がやわらかくなびく。衣と一緒にさらさら揺れた。

 彼女も夏澄と同じで、なにか浄らかなふしぎさがあった。

「ごめんなさいね、風花」

「なんで、わたしの名前……」

「私たち、本当に何度も会っているのよ。私はスーフィア。海の精霊よ」

 スーフィアは少し瞳を伏せる。

「忘れているのはね、飛雨があなたの記憶を消したから。本当にごめんなさい。でもね、私たちは夏澄を護らないといけないの」

「護る?」
「夏澄はね、水の精霊なの。この世で唯一の存在で、仁愛の精霊とも呼ばれているのよ。彼だけは、人に存在を知られたらいけないの」

「仁愛……?」

「水の精霊の一族は、精霊の中で稀有なの。優しさだけでできていて、この世の動物や植物を護っているのよ」

 ……本当に逢ったことがある?

 いわれても、やはりとても信じられない。

 あんなふしぎな子を忘れるなんて、あるんだろうか。

 風花はもう一度、夏澄を見た。

 仁愛の精霊。

 なんてきらきらしているんだろう。この世に、そんな優しい精霊がいたなんて。

 夏澄は水の光の中で、儚げに立っていた。



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