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SF、読書のよろこびマガジン

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大人になってからSFの楽しみを知った人の記録。本が好き、ゲーム興味ないかたはここで。
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#エッセイ

「月が綺麗ですね」と言わせたのは太宰治じゃないの

「月が綺麗ですね」と言わせたのは太宰治じゃないの

アイラブユーを「愛してる」と訳さずに「月が綺麗ですね」とでも言っておけ、
と夏目漱石が言ったことにされている。

読んでも、そんな場面ないので調べてみたら
「漱石が教師時代に言ってそうなこと」だった。
架空の名言がミーム化された野原ひろしみたいなことになっていた。
沢山文章あるのになんで架空の言葉追加した!お札の肖像画でいちばんイケオジやぞ!

だけど、太宰治の「津軽通信」を(金がないので図書館で

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【読書記録】「笑う萬月」レコードからCD、万年筆からワープロにうつる時代の記憶

【読書記録】「笑う萬月」レコードからCD、万年筆からワープロにうつる時代の記憶

花村萬月「笑う萬月」を読みました。この人のエッセイはいくらでも読めるし、読むたびに痛い。
本人は文学について学んでいない。学校もほぼ行ってない。
なのに、バイクだ音楽だと青春を謳歌して、自分の才能とカンの鋭さでエグいぐらいもてて、暴力衝動や薬物中毒も全部作品に昇華させて作家として成功した。

花村作品は、才能というものの残酷さを思い知らされるから痛い。
直接そんなこと書いてないのに、
「お前、人生

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【読書日記】高橋源一郎「だいたい夫が先に死ぬ」 読みたいものと読んでたものが次々出てくる

【読書日記】高橋源一郎「だいたい夫が先に死ぬ」 読みたいものと読んでたものが次々出てくる

高橋源一郎というおいちゃんが、タモリさんや黒柳徹子のように、文学界にずっといてくれるような気がする。

はじめて名前を知ったのは文藝賞の審査員のひとりだったときで、ぼくはまだそれが「選評」とも意識しないで読んでいた。

忘れもしない。
山崎ナオコーラのデビュー作「人のセックスを笑うな」を大賞に選んだときのことで、中身を読む前にペンネームとタイトルだけでその素晴らしさに衝撃を受けて、しばらく読まずに

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【読書感想文】カバーが二重になってた阿佐ヶ谷姉妹のエッセイ

【読書感想文】カバーが二重になってた阿佐ヶ谷姉妹のエッセイ

阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らしを買ったら、最初についているカバーの下からもうひとつカバーが出てきた。
こんな経験は、買いやすい表紙になっていた「夫のちんぽが入らない」以来だ。

最初に出たときはこの表紙だったようです。

イラストで、舞台衣装のピンクドレスで、間取りの相談をしている!表紙からして2人は仲が良いが、少し広いところか、近すぎると生活音や家事の分担もめんどうだし、少し離れて別々に暮ら

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ここだけ世界旅行解禁! 高野秀行「語学の天才まで1億光年」 #読書感想文

ここだけ世界旅行解禁! 高野秀行「語学の天才まで1億光年」 #読書感想文

情報のない秘境を取材するために世界各国のレア言語を学び、そして次の国にいくたびに前に習ったことは忘れてしまうノンフィクション作家、高野秀行。

ゆっくり長く読みたいのに、残りページ数が最近のかき氷みたいに、すうっと溶けてなくなってしまう。それぐらい手が止まらないエッセイだった!

テーマは語学。ここに出てくる外国語学習は、仕事のために嫌々覚えさせられたり、将来の安泰のためにしかたなく習うような世知

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高野秀行「語学の天才まで1億光年」は禁煙中の人に見せつけるタバコ【読書日記】

「語学の天才まで1億光年」。
ぼくに読書の楽しさを教え、小説より旅行エッセイのほうが面白いじゃないか、小説の細かくこった表現なんて不要なんじゃないかとまで思わせた高野秀行の新作です。

最近は海外納豆についての研究をしていて、面白い話題からしだいに文化の広がり方がわかってくる内容でしたが、外国語学習をテーマにした新作もやっぱり面白い。

面白いだけでなく、これは海外旅行を禁じられている人にとっては

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【読書記録】日常生活の中の遍路「内澤旬子の島へんろの記」

【読書記録】日常生活の中の遍路「内澤旬子の島へんろの記」

四国のわだちがある遍路とは違う、小豆島の遍路みち。
ほぼ廃墟だったり、イノシシに道を掘り返されていたり、ほぼ洞窟だったり、いやここ誰かの庭だろって道があったり、景色はカラフルに刺激的に変化する。

忙しい日常の合間をぬっての、車と歩きを使って長い月日で分割した巡礼の旅。豪快に休みと金を使った旅行記と違って、多くの人にマネできそう。小豆島に行かなくても、知ってるはずの地元の道をていねいに歩くだけで、

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90をこえて、桐野夏生の残酷な小説を読んだばあちゃん、その葬儀

90をこえて、桐野夏生の残酷な小説を読んだばあちゃん、その葬儀

花村萬月の小説には、老眼になって「たかが読書がおっくうになるんだよ」と若い主人公にぐちる男が出てくる。

浅田次郎のエッセイには、麻雀パイを見間違えてチョンボして、眼科で老眼を宣告されて落ち込む作者の姿がある。

渡辺謙が、日本の文字は小さすぎて見えなあああああい!とハズキルーペのCMで怒っていたのは、単に文字が小さいだけじゃなくて、まだ人生は長いのに、世間が自分を無視している感じ、これから一生、

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たまった本を処分するのが苦手な人は、自己紹介も苦手

たまった本を処分するのが苦手な人は、自己紹介も苦手

読めないほど汚れた本は縛る。あとは古本屋に出す。もしかしたら読むかもしれないものは家族にあげる。最近両親の読書量がすごい。金のかからない趣味でよかった。

さて、本の処分だ。
1年に1回は本棚をクリンナップする。

そのたびに、出す本を見られるのが恥ずかしいと書いている。
古いSF小説とかゲーム関連書籍を出すのを見られたら、ああそういう人だな、いかにもな本読んでるな、頭の中にはああいう情報が詰まっ

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