成田 恵

騙されないでください、女っぽい名前のおじさんです

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マガジン

  • 宗教史の考察部屋

    歴史的な観点から宗教や寺社仏閣を考えてみるマガジン。僕は、宗教施設に関わる仕事を生業としていることから個人的な趣味として宗教の歴史なんかを調べています。その考察記録を残しておきますので、よければ読んでみてください。あくまで考察。そして決して宗教勧誘じゃないよ。

  • 『ある少年僧の話』

    筆者が出会った「ある僧侶」をモデルとしたエッセイ風フィクション小説。実在人物の特定を避けるため、有料です。

  • 読書感想文

  • 日々の単なる思いつき

    テーマもなく、論拠もない、本当にただの思いつきをつらつら書き連ねます。

最近の記事

「もののけ姫考」②アシタカのモデルとは

さて、前回は「もののけ姫は歴史の裏にいた人々の物語である」という話をした。 実際、この話は宮崎駿監督自身が語っているし、数々の解説本や某オタクの頂点系おじさんYouTuberによって世間にも広く膾炙している。 しかし、そのモデルを深く追求した記事は、僕のオンボロなアンテナでは見つけられていない。 そこで、前回の記事では以下の3つの人物のモデル・・・というか象徴するものを考察した。 エボシ・・・日本のメインルートである瀬戸内海とは別に、南海経由で伝割った火縄銃と、それによっ

    • 「もののけ姫考」①登場人物は皆「歴史の裏にいた人々」

      スタジオジブリ制作の宮崎駿監督作品『もののけ姫』は、当時の日本映画興行収入を更新した作品であり、個人的にはジブリで一番好きな映画でもある。 その鋭いメッセージ性は多くの人々の心を掴んだ。今でも日本一有名なオタクおじさんを中心にYouTubeなどで多くの考察がなされており、公開から30年が経とうとしていながら全く色褪せない名作だ。 さて、先程述べた通り多くの考察がなされる本作だが、なぜそれほどまでに考察しがいがあるのか。 それは、宮崎駿が選んだ舞台が室町時代の終わりであり、か

      • なぜ日本の仏教寺院は世襲するのか〜その歴史的背景と「しゃーない」理由〜

        X(旧Twitter)で仏教関連の話題になると、決まって日本仏教と僧侶の在り方に対する議論が繰り広げられる。教義そのものの話は盛り上がりにくいからしょうがないが、結局は「僧侶自身」「仏教教団自身」の批判に帰着する。それはなぜか。 答えは単純。そこが日本仏教界にとって最も突かれたくないウィークポイントだからだ。僧侶が妻帯しているのは教団が戒律を重視していないからだと言われたら、おっしゃる通りなのである。そんなこと、教団も、教団を運営する僧侶自身もわかっているだろう。だって彼ら自

        • ある少年僧の話-1

          「なんで同じように出来ないんだろう」 僕は小さい頃から発達に問題があったと思う。 3歳まで「あダダん」しか発語できなかった。 お母さんも、お父さんも、おじいちゃんもおばあちゃんも全部「あダダん」である。 落ち着きがなく、みんなに行動を合わせることができない。みんながやっていることに集中できないのに、逆にみんながとっくにやり終えていることをいつまでも集中してやり続けたりする。やろうと思っていたことが早めに失敗したり、やってる最中に邪魔をされると、すべてがどうでも良くなる。 そ

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          ある少年僧の話-0

          まえがき 今から綴る物語は、現代に生きるある僧侶をモデルにしたフィクションである。 彼は高名でもなければ、偉大でもない。 現代人であってもつい僧侶に求めてしまいがちな高潔さも、厳格さもない。 なんなら、いわゆる「普通の人」と比べても愚かであり、迷いの中に生きているように見える。 そう、彼はただの人間なのだ。 ただし、彼の抱える迷いにこそ、その真価があると私は思う。 私が筆をとるのは、彼のこれまでの人生から、現在の仏教を生きる僧侶たちの抱える環境や苦悩が、ほんの少し垣間

          ある少年僧の話-0

          デューク更家が教えてくれた「歩きながら勉強法」

          20年ほど前、通っていた高校の周年式典があって、その特別講師としてデューク更家氏が講演をしてくれた。 うちの母校のセンスすごい。 更家氏はテレビなどでもよく見る有名人だったので、学生たちは好奇の目で彼をみていたが、内容そのものが非常に学びあるものだった。 テーマは「歩くことと学習」(実際は覚えていないけど大体こんな感じ) 氏は語る。 「君たちはテスト勉強で暗記なんかもするだろう?その時、座ってやってちゃダメ!座ってたら、脳に血が巡らないの。立ったまま覚えるのもいいけど

          デューク更家が教えてくれた「歩きながら勉強法」

          日本に宗教戦争はあったのか。

          この記事を書いているのは2024年10月9日。去年の10月7日、パレスチナ・ガザ地区を支配するハマースがイスラエルに侵攻しパレスチナ・ガザ戦争とも呼ばれる紛争が発生した。それから一年が経ったというニュースを見て、もうそんなに長期化しているのかと驚いた。 イスラエル・ガザ戦争の本質は宗教ではない この紛争は、一般に宗教戦争とも言われる。イスラエルは、ユダヤ人・・・つまりユダヤ教に基づく民族国家であり、パレスチナは、イスラム教世界の一員だ。ユダヤ教とイスラム教の宗教対立が戦争

          日本に宗教戦争はあったのか。

          バイバイの意味

          5歳の息子と話をしていると、こんなことを聞かれた。 「友達とはバイバイって言うのに、先生にはさようならって言うのはなんで?」 相手が5歳児なので、なんと説明して良いか少し考えたが、ひとまずここは 「バイバイは仲良し同士でしか使えなくて、さようならは大人にでも子供にでも、誰にでも使えるんだよ。」 とだけ言っておいた。 もっと深い意味は、彼自身が大人になるにつれ理解してゆくだろう。 この問いで、僕はあることに気がつく。 「そういえば、バイバイって意味わからんな」と。 もち

          バイバイの意味

          古代の地形を見れば、神社の役割がわかる?

          僕は仕事柄、寺社仏閣に関わることが多いのだが、個人的にもそれらの歴史や背景を調べるのが好きだ。 専門家ではないが、素人でもない。いわゆる趣味の領域である。 信仰心ベースではなく、歴史ベースでそれらの宗教施設を巡ると、信仰心だけで参拝していると思いもよらない役割が見えてくることもある。 特に好きなのが「地形と寺社仏閣」の関連性だ。 有名なところで言うと、比叡山は京の都の鬼門を守るためとか、東照大権現は江戸の街の鬼門を守るためとか、そういった説が有名だ。 しかし、もっと現実的で

          古代の地形を見れば、神社の役割がわかる?

          むしろ情報が主食では?

          『ラーメン発見伝』という漫画の登場人物・芹沢(ラーメンハゲ)の名言がある。 「ヤツらはラーメンを食ってるんじゃない。情報を食ってるんだ!」 これはネットでもよく引用されるものなので目にすることが多い。主にネタとして用いられているが、僕はこの言葉は至極名言だと思う。 最近大人気となったNetflixのドラマ『地面師たち』に登場するハリソン山中も、こんなことを言っている。 「ウイスキーマニアが、今はもう製造できないポートエレンを高値で買おうと競い合っている。 でも彼らのほと

          むしろ情報が主食では?

          目の前に転がった1円玉を拾うべきか

          病院での診療が終わった後、薬をもらいにロビーを出てすぐ左の薬局に入った。 順番を待つ間に座った席は、受付及び会計カウンターのすぐ後ろ。 ソファに座りながら本を読んでいると、会計をしているおばあさんが財布から小銭を落とした。 その小銭は一枚だけで、僕の目の前にコロコロと転がって、止まった。1円玉である。 おばあさんは、小銭の在処を見つけられないでいる。 僕からすれば、座ったままでは届かないので、一歩踏み出して拾い上げる必要があった。 僕は逡巡した。 「この1円玉は拾うべ

          目の前に転がった1円玉を拾うべきか