見出し画像

デューク更家が教えてくれた「歩きながら勉強法」

20年ほど前、通っていた高校の周年式典があって、その特別講師としてデューク更家氏が講演をしてくれた。
うちの母校のセンスすごい。

更家氏はテレビなどでもよく見る有名人だったので、学生たちは好奇の目で彼をみていたが、内容そのものが非常に学びあるものだった。

テーマは「歩くことと学習」(実際は覚えていないけど大体こんな感じ)

氏は語る。

「君たちはテスト勉強で暗記なんかもするだろう?その時、座ってやってちゃダメ!座ってたら、脳に血が巡らないの。立ったまま覚えるのもいいけど、できれば歩きながら暗記するのがベストだね!ふくらはぎがグングン血を脳に持っていってくれるから、勉強が捗るよ!」

僕は、中学生の時は下から数えた方が早いような劣等生だった。
「とにかく反復!つめこみ!」みたいな勉強法の末期の時代に小中学生だったというのもあったが、僕はそうした教育についていけない人間の一人だった。

氏の講演はその後、ウォーキング方法やストレッチ、質疑応答などで大盛り上がりだったが、僕はその「歩きながら勉強法」をなんとなく覚えていた。

夏休みが終わり、すっかり秋めいてくると、中間テストが近づいてきた。得意教科はある程度点が取れたが、暗記を必要とする問題が苦手だった。
それまで受験勉強もテスト勉強も真面目に取り組んでこなかったし、成績を気にしたことも少なかった。
けれど、今回は少し気合を入れていた。
母校の謎文化で、中間テストの成績優秀者ベスト3が朝礼で表彰されるというのだ。

自己肯定感が低かった高校生の僕は、とにかくなんでもいいから他者に褒められたいというえげつない承認欲求はあったので、今回はこの表彰を目指すことにした。

そんな時に思い出したのがデューク更家の「歩きながら勉強法」だ。
もちろん、この勉強法は、何かを書いて覚えるということは出来ない。
もっぱら「なにかを読む」ということに特化している。
歴史の年号、理科の元素記号、英単語なんかがその範疇だろう。
僕は、こうした「読む事で身につく暗記系」に標準を絞り、まずノートにそれらの項目を書きまくった。
そして、それを片手に、部屋をぐるぐる。
飽きてきたら、廊下を行ったり来たり。
気分を変えるために、外に出てウロウロ。

読者のみなさんもお気づきかもしれないが、その姿は完全に彼↓である

おめぇ、すげぇ効率いい勉強法だったんけ...


心底驚いたのは、この暗記法、マジで効くという事である。
体感的に、座って覚えるより2、3倍効率がいい。
眠くもならないし、机の端っこの漫画に集中力削がれることもない。ついでに健康的だ。腰も首も痛くならない。

自信満々で臨んだ中間テスト。
手応えはばっちり。

翌週、テストの結果が発表される。そこで僕は学年3位に滑り込んだ。今まで勉強で一桁順位になったことなどなかったから、飛び上がって喜んだ。うちの母校は学力的には底辺オブ底辺ではあったが、それでも初めて勉強で成果が出たのは嬉しかった。


ところで、5年ほど前に読んだ本で『運動脳』(アンデシュ・ハンセン著)という世界的ベストセラーがある。


この本は、人生におけるあらゆる問題や困難に対して「それを解決する方法は、そう、運動である」と結論づけるもので、全ての結論を「運動」一本で片付けるパワープレーが爽快だった。
驚いたのは、なんとこの本でもデューク更家氏の言っていた「歩きながら学習法」が提唱されていたのだ!理屈もおおよそ同じで「歩きながらだと、酸素を含んだ血液が脳に送られやすくなるので、記憶や思考が活発になる」というものだった。
僕は、世界的ベストセラーで語られていた勉強法を、はるか前から実践していたのだ!
すごいよデューク更家!

さて、話を元に戻すと、中間テストで学年3位に滑り込み、朝礼で表彰されるのを心待ちにしていたのだが、どうやら表彰式が1週間持ち越されるらしい、という噂が流れた。
どうも、交換留学に言っていた同級生がちょうどテスト期間中に帰ってきたので、1週間遅れてテストを受けることになったらしい。

まあ、結果は変わらんだろうとたかを括っていたが、翌週月曜日の朝礼前、表彰される生徒が呼び出された。
僕の名前は呼ばれなかった。

留学帰りで後からテストを受けた生徒が、学年2位の成績を残したのだ。
僕は4位、表彰圏外に弾き出された。

「おかしいだろ」「他のやつから問題見せてもらってたかもしれないだろ」
そうした僕の猛抗議も虚しく表彰式は行われ、受賞者達の太陽のように輝く笑顔は、僕という深く暗い影を生み出したのである。


まあ、この勉強法自体はその後もめっちゃ役に立っているので、ありがとう、デューク更家。

おわり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?