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『ある少年僧の話』

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筆者が出会った「ある僧侶」をモデルとしたエッセイ風フィクション小説。実在人物の特定を避けるため、有料です。
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記事一覧

ある少年僧の話-1

「なんで同じように出来ないんだろう」

僕は小さい頃から発達に問題があったと思う。
3歳まで「あダダん」しか発語できなかった。
お母さんも、お父さんも、おじいちゃんもおばあちゃんも全部「あダダん」である。
落ち着きがなく、みんなに行動を合わせることができない。みんながやっていることに集中できないのに、逆にみんながとっくにやり終えていることをいつまでも集中してやり続けたりする。やろうと思っていたこと

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ある少年僧の話-0

まえがき

今から綴る物語は、現代に生きるある僧侶をモデルにしたフィクションである。

彼は高名でもなければ、偉大でもない。
現代人であってもつい僧侶に求めてしまいがちな高潔さも、厳格さもない。
なんなら、いわゆる「普通の人」と比べても愚かであり、迷いの中に生きているように見える。
そう、彼はただの人間なのだ。

ただし、彼の抱える迷いにこそ、その真価があると私は思う。

私が筆をとるのは、彼のこ

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