ある少年僧の話-0

まえがき

今から綴る物語は、現代に生きるある僧侶をモデルにしたフィクションである。

彼は高名でもなければ、偉大でもない。
現代人であってもつい僧侶に求めてしまいがちな高潔さも、厳格さもない。
なんなら、いわゆる「普通の人」と比べても愚かであり、迷いの中に生きているように見える。
そう、彼はただの人間なのだ。

ただし、彼の抱える迷いにこそ、その真価があると私は思う。

私が筆をとるのは、彼のこれまでの人生から、現在の仏教を生きる僧侶たちの抱える環境や苦悩が、ほんの少し垣間見えるのではないかと思ったからだ。無論、彼はそうした多くの僧侶と比べても相当に変わっているし、重ねて言うが愚か者である。

はじめに述べた通りこの物語はフィクションではあるが、見る人が見れば本人が特定されてしまうことから、有料とさせていただく。もしそれでも見ていただいた方がいれば感謝に堪えない。
また、そういった方々には、有料部分の外部への転載等は固くご遠慮いただきたい。
また、連載にするつもりではあるが、完全に不定期となることはお許しいただきたい。

さて、この物語は一人称のエッセイ調で語ろうと思う。他にも理由があるが、3人称だと筆が乗らないからだ。
中には下世話な話や下品な話もあるが、そう言う類の話は読み飛ばすか、笑い飛ばして欲しい。
僧侶であるにも関わらずこんなに愚かであるというところが、この物語のキモなのだ。
できる限り時系列は過去から遡ろうと思うが、後から思い出すエピソードもあるだろう。
その際は「〇〇の時」や「〇〇歳ごろ」と補足を入れるので、ご容赦いただきたい。

重ねて言うが、この物語は実在の僧侶をモデルにしたフィクションである。
一方で、彼が自分自身では世に出すことの出来ないであろう内心を代弁するものでもある。

似たような悩みを抱えていたり、迷いの中にいる人の慰めになれば幸いである。

次回更新からは、語り手である私自身が「彼」になったつもりで綴ってゆく。
そこでお会いしましょう。

おわり

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