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戦争の悲劇ではなくて、あの子の人生/漫画「アノネ、(今日マチ子)」

戦争の悲劇ではなくて、あの子の人生/漫画「アノネ、(今日マチ子)」

あらすじ

多くの日本人に知られている日記を書いたアンネ・フランクから着想を得た、戦時下のある少女のお話。

もう疲れちゃったよね

読んでいる間中、ずっとずっと思う。みんなもう疲れちゃったよね。戦争も、人間関係も、成熟も、性も、全部疲れちゃったんじゃない?どれかだけでも大変なのに、やってられないよ。
肉体的な苦痛が多すぎる上に、考えることがあまりに多すぎる。それも、一つ一つしっかり考えていたら正

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本がなければ生きてこられなかった

本がなければ生きてこられなかった

本が自分にとってどういう存在なのかを考えてみた。

本に救われてきた

本は人生を豊かにするというけれど、私にとってはもっと切実なものだ。プラスαというよりも、マイナスを少なくする装置だったように思う。
続くと心肺停止になるような状態を止めてくれるAEDのようなもの、降りかかる火の粉から身を守ってくれるシェルターのようなもの、騒音を遮断してくれる耳栓のようなものだった。本は私を現実から逃がして、生

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新刊を楽しみにはや17年 もう迷子/小説「鵼の碑」①

新刊を楽しみにはや17年 もう迷子/小説「鵼の碑」①

17年待った。17年。待ちに待った京極夏彦の京極堂(百鬼夜行)シリーズの長編の最新作だ。なんかもう泣いちゃうよ。
小学生の頃に京極夏彦の本シリーズを読み始めて、ちょうど17年前、中学生の頃に当時の最新刊の「邪魅の雫」まで読んで、続きはいつ出るんだろうと楽しみにしていた。そんな私ももう31歳だ。

17年待ったものってどうしたらいいの。いつ読もう。たくさん寝て頭がしゃっきりしているときか。仕事が本当

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人にだめとか言うなタコ/小説「人間失格(太宰治)」

人にだめとか言うなタコ/小説「人間失格(太宰治)」

あらすじ

自分にとっての「人間失格」

初めてこの小説を読んだのは小学生の頃、主人公の葉蔵はなんて愚かなのだろうと思った。他人にも自分にも嘘をついて、どんどんだめになっていって、最後は薬物に手を出して、ボロボロになる。これは「人間失格」だよね、だめな人だねと。

好きな人に勧められて、大人になった今もう一度読んでみたら、葉蔵への解像度が少し上がった。
葉蔵は弱さゆえに他者に対してどこまでも不誠実

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