小説「小間物屋を開く」第6回(全8回)
今にして思うと、富士急ハイランド行の朝、発症した背中の痛みは、心筋梗塞の前兆だったようだ。
実は他にも前兆らしきものはあった。不整脈だ。
最初に不整脈が起きたのは、吉祥寺の映画館でソ連のSF映画を観ていた時だ。その次はアニメ会社の若手プロデューサーの結婚式。真っ青な顔で脂汗をだらだら流していたようで、近くにいたベテラン声優さんから「大丈夫ですか?」と声をかけられたりした。
人が多い場所で起こるので、パニック症候群じゃないかと思った。知り合いの脚本家の薦めもあって、いっ