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『U理論』の概念でともに潜る──読書会「ブックダイビング」に出ると何が起きるの?③

前回に続き、読書会をともに企画開催している仲間である、ゆーじんさん・ちさとちゃんと一緒に、読書会「ブックダイビング」について語った座談会の内容をお送りします。今回が最終話です!

3人による座談会の過去の記事はこちらです。
第1回:主催者3人で語る!今までにない読書会「ブックダイビング」の魅力とは!?
第2回:次回読書会で『現代思想入門』に潜る意義
第3回:『暇と退屈の倫理学』をともに読んで──読書会「ブックダイビング」に出ると何が起きるの?①
第4回:『日本文化の核心』をともに読んで──読書会「ブックダイビング」に出ると何が起きるの?②

まさき:
前回に続き、ゆーじんさんとちさとちゃんをお迎えしてお話しさせていただいております。思いのほか話が盛り上がって、3回目に突入しておりますが、「ブックダイビングに出て何が起こるのか」についてさらに話をしていきます。

過去2回は、「この本を読んでこういうことが起きたよね」という、本から得た影響について話してきました。読書会「ブックダイビング」は、本に潜るという特徴がありますが、「ブックダイビングに出て、本に潜ることで何が起きたのか、何を感じたのか」について今回は話していきたいなと思います。

まず、ちさとちゃんからそのあたりお話ししていただいてもいいですか?

ちさと:
そうですね、ブックダイビング中、「問いを持つこと」を最初に勧められるんですが、問いを持つこと自体はたぶんいろんな読書会でも説明で入っていたり、個人で読むときも問いを持ちながら読んだりすることもあるんです。私が感じたブックダイビングの特徴としては、「ブックにダイビングする」ので、「問い自体にも潜っていく」とか、「問い自体が進化し、変容していく」ことがあったので、それがブックダイビングの一つの特徴だと感じていましたね。

もう1点は、「保留読み」です。

読書が好きな人でも、読み方は多分それぞれあると思うんですね。私もざっと読む本があったりとか、オーディオブックで聞く本があったりするんですけど、ブックダイビングでは一つの読み方として「保留読み」を最初に説明してくれます。

これは私は気づいていなかったかもしれないんですが、無意識にやっていた読み方でした。それを「保留読み」という形で紹介していただいて、ある種の「ネガティブケイパビリティ」じゃないですけど、「わからないところは保留しても、今後読んでいく中でわかることもあるし、わからないこともある、それを受け入れる」という読み方がブックダイビングの特徴だと感じていました。

まさき:
いやぁ、ゆーじんさんと企画してるときに意図したことがちゃんと伝わったなという感じですね。受け取ってくれてるなとしみじみ感じてしまいましたが、ゆーじんさん、どうでした?

ゆーじん:
嬉しいですね。まさにそのとおりで、「保留読み」から話すと、ブックダイビングでは「U理論」という概念を導入してるんですが、その概念の中にも「保留」という大事な概念があります。物事を理解していくときに邪魔になるのは、自分の固定概念や固定観念で、普通に読むとそれを持ったまま「これはこういうもんだよね」と読んでしまうから、あんまり自分の考えが変わらなかったりするんです。

そうではなくて、そこで一旦自分の考えを保留して読み進めることで、つまり、わからないことでも、わからないまま進めることで、突然今までわからなかったことがわかるようになるとか、今まで自分が持ってない考え方やものの見方が、だんだんわかってくるということが起きます。

一旦自分の考えを手放したり、書いてあることでもわからないものはわからないままで耐えたり、人間わからないことはわかりたくなるもんなんですけど、その圧力に耐えながら進む。だからこそ、自己が少し解体されて新しい何かが身につく、変容につながるようなことをプロセスとして意識していて、ブックダイビングと相性のいい読み方としてお勧めしたことが、ちさとちゃんも理解してくれてるようだと思って嬉しいです。

C・オットー・シャーマー『U理論 過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術』(英治出版)

まさき:
本の読み方ってその人の生き方というか、その人の癖が出るような気がしてて、私もそのタイプですが、丁寧に全部しっかり理解していかないといけないと思うと、読むのが辛くなっちゃったりとかして。ちさとちゃんが「ネガティブケイパビリティ」という言葉も出してくれましたけど、曖昧なものを曖昧なままいけるかどうか、わからなくても先に進む気持ちを持っていると、本を読むのもすごい読みやすくなると思いますし、そういう気持ちで日常過ごしてると、より生きやすくなる気がします。

ゆーじん:
あと、問いの話ですね。問いも変わっていくという話もしてくれましたが、そこもすごくポイントなんです。最初に持つ問いは、「大まかな問い」というか、「なんとなくこういうことを知りたい問い」になることが多くて、それはそれでいいんですが、潜っていくうちに実はその問いじゃなかったとか、意識してると自分の中でもう少しこういう問いなんだと変わっていくはずなんですよね。

潜っていくからこそ、そしてフィードバックがあるからこそ、また問いもそれによって変容していく。問いも保留することで、問いの変容も起こりやすくて、それを意識することで、自分の一番知りたい問いが見えてくる

そういうプロセスも楽しんでもらいたいし、そのように「より深く潜る」が起こると思うので、潜っていく読み方の大事なポイントとして、「問いを持ちつつ問いは変わっていく」は、読み方の譲れないところであり、今後も大事にしたいなと思っているところです。

まさき:
このブックダイビングはU理論の概念を参考にして取り込んでいる読書会だと案内でも書かせてもらってますが、本の読み方に関しては、企画段階で秋満吉彦さんの『名著の読み方』という本をゆーじんさんと読み込みながら内容を考えたことも思い出しました。

秋満吉彦『「名著」の読み方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

秋満吉彦さんは、NHKのEテレの『100分de名著』という番組のプロデューサーさんで、やたら名著を読んできた方なんですよね。その彼がどうやったら本の深いところまで行けるかについてのテクニックを伝えてくれてる本なので、とても参考になりました。

ちさと:
私、もう1つ話したいことがありまして、先ほどはブックダイビングの前半における、「保留し仮説を立てながら潜っていく」「問いを持って潜っていく」というプロセスだったんですけど、ダイビングなので潜った後は「浮き上がる」というのか、また戻らないといけないのですよね。潜った後の浮き上がるときのプロセスにおいてもガイドがあるので、次のステージ、次の行動が見やすくなっていると思いました。

その戻るときのプロセスも、最後に「ブックダイビング・シート」などで各参加者が言語化することができますし、「兆しを感じる」とか、自分がこれから探求していきたい「新たな問い」とか、そのような言語化をする機会がいくつかあったので、他の読書会との違いを感じましたね。

ブックダイビング・シート

まさき:
確かに前半の潜る部分って本の力を借りたりして、本の中身に潜るプロセスを作っていってるのですが、浮上する部分は、他の参加者の力もそうですし、ゆーじんさんと私がコーチであり、ファシリテーターであることの関わりがより発揮されているところなんだろうなと、今ちさとちゃんの話を聞きながら思いました。

ゆーじん:
いろんな参加者が客観的に「この人はこういうのを好きなんだな」とか、「こういう傾向があるんだな」みたいなことを、外にいるからこそフィードバックできますし、「兆し」として「こういう方向性がやっぱり興味があるんですね」と、本人がハッとするようなことも起こりやすいというのは、言われてみれば重要なポイントですね。

U理論の概念を取り入れたブックダイビングの心構え

まさき:
自分のことは一番わかりにくいと言いますし、客観的に「こういう特徴あるんだね」と言ってもらえると、自分の気づきにもつながっていきますよね。

ブックダイビングは体験してみないとどんなものかわからない部分もあるかもしれませんが、私たちが言葉で伝えられる範囲で伝えさせていただいたので、「面白そうだな」と思った方は、ぜひブックダイビング、一緒に潜りに来てほしいなと思っています。

本当にお二人、ありがとうございました!

次回6月開催ブックダイビングのご案内はこちらです📚


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