静寂から目を移す|残暑/01 #1|鰐部祥平
夏は地上が最も賑わい輝く季節だ。木々が青々と茂り、草花が咲き乱れ色彩が増した大地を冬とは比べ物にならない光が明るく照らし、空の青さは底が抜けたような深みを増す。そんな青い空を真綿のような白い入道雲が縁取り美しいコントラストを演出している。また視覚だけでなく音も賑やかだ。昼夜問わず蝉の鳴き声が鳴り響き、時にはうるさいくらいだ。こうした夏の景色は毎年同じように繰り返されるが、何度見ても心が沸き立つような感覚を与えてくれる。
少年の頃の私はとにかく昆虫が好きで、夏になると虫取り網