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抵抗の快楽|残暑/01 #2|山下陽光

山下陽光(Hikaru YAMASHITA)
1977年長崎県生まれ。文化服装学院を卒業後、劇団員や借金取り、古着屋「素人の乱シランプリ」店長他を経て、服飾ブランド「途中でやめる」をスタート。著書に『バイトやめる学校』。「おもしろ金儲け」を多角的に実験するアーテイストであり、デザイナー。
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2024年8月31日のこと

1. おはようございますリビング文学

2. 昨日は起きて、朝ごはん食べてから、アトリエ部屋で締切原稿を書く。こんなもんかなと、とりあえず放置して、散らかり部屋を片付ける。

3. 9月3日から始まる山下陽光のおもしろ金儲け実験室という展覧会が三軒茶屋の生活工房でありまして、そこに1トンくらいの荷物を運んだんです。

4. よくもまぁそんな荷物があったなぁと、加工前の古着や布がほとんどで、そこにミシンを持ち込んでバイトの子も出勤してもらって、職場にしながら展示をみせていきます。

5. 運び出された後のミシン部屋が、本当に何か運び出しましたかね?ってくらいに散らかりまくってて、どんだけ荷物があったんだよと言いたくなる。

6. しかし、なんとか片付いて、作業机でカタカタと原稿書けるヤンけで、朝に書いたの読み返したら0点すぎて、もう一回書いてみた。読み返したらすぐに却下しそうなので、またほったらかしにして、片付けを続ける。

7. 橋本治ブームが到来してて、Youtubeで橋本治が話してる動画を流しっぱなしにしてたらどんどん吸い込まれて、観てしまう。

8. 橋本治の人工島なんとかという本の朗読ページが再生されて、朗読を聴きながらの部屋の片付けがとても相性がいい。作業が捗らない。

9. どらないンスよ。

10. つい最近まで中川六平、団鬼六、永六輔という666を読んでたんですが、その後に開高健ブームが到来している。今生きてない、昔というか近過去くらいの人の文章を読むことの良さは、SNSやネットの地獄の価値観が皆無なところでコンプラ大シカトなことだと思っているんだけど、読んでみるとコンプラも価値観もそんなに古くないし炎上しなさそうである。

11. なんだけど、現在のがんじがらめとは違って自由な発想と遠慮がなく書いてあるところがあって、今は書き手がビビり散らかして100書いたら怒られるところをギリギリまで攻めることもなく50も書かずに14くらい書いて曖昧にしてて何を言いたいのかが伝わらない。

12. 今、一日に7時間くらいスマホ触ってるけど666の三人は全く触ってなかったと思うと、この時間は睡眠や労働をも超える時間で、一体何やってんだと思う。

13. iPhoneだから電話やんけ!と思うかもですが、スティーブ・ジョブズの何がすごいって、あの持ち歩けるパソコンを電話でしょiPhoneですよって売り出したのが凄いとホリエモンが言ってた。

14. 確かに、スクリーンタイムを見たらTwitter(旧X)やLINEにほとんどの時間を使ってて、電話は1週間で10分しか使ってない。

15. スマホがなかった2000年でも大人だったので、何をこんなに熱中してんだよ!と思ったり、666の文章読んでて感心したりするってことは、今後、2050年頃に道具なしで空を飛べるようになったとしたら、今使ってるスマホの7時間が空を飛ぶ時間にスライドして、ずっと浮きっぱなしになって、離島に住んでる日本人が浮ついて考える哲学が浮上してくるとしても、それでも2020年代のSNS中毒になってる文章を読んで、浮ついてる50年代の日本人に、浮いてるだでけ誰とも繋がってないけど、ネットだけとは言え、いろんな議論をして繋がってて20年代の人らはちゃんとしてた。とか言われるんだろうか。

16. 開高健の「人とこの世界」を読んでたら深澤七郎の笛吹川のことをこのように書いている。

形容詞ぬき、詩ぬき、内的独白ぬき、自意識ぬきで、達しているのである。徹底的に現実的な固有なるものに衝突する抵抗の快楽を味わいつつ私は読みつづけていって、殺戮と生誕のとめどない輪廻を感触し、この小説は終止もなく開始もないのだとさらされて本をおく。

17. どうよどうよ、すごすぎるヤンけヤンけ、抵抗の快楽って初めて見た時、これは横に書いてるけど、本だから縦に書いてあんすよ抵抗の快楽って、左側のてへんが2連続して、線が縦と横に入り乱れてチェックの柄に見えてバチコーン!と電気が走って、コラー電気禁止ですよ、反原発だろと言われた気がした。

18. 違うんだよ違うんだよ、そうなんだよ。本当は空調服と電動アシスト自転車について書いて、反原発って言ってたのに電気にズブズブやんけ俺日記を書こうと思ってたんですが、開高健の抵抗の快楽って言葉にビカーンとなりすぎたんですよ。

19. 抵抗の快楽だったわ。マジで。素人の乱でデモをやりまくってた時は抵抗するのが快楽で、その快楽が本物にされてしまいそうで、すっと引いたんだった。そこを健にタイムスリップ言い当てられたのが良かった。

20. そういう時は思わず縫っちゃう。

21. アトリエを片付けていたら、THEブルーハーツ 1000の証拠という本が出てきた。人気絶頂の頃のブルーハーツにまつわる1000のことが掲載された本で、その中にブルーハーツのメンバーが着てたTシャツを作った人が載ってて、マーシーがよく着てた中原中也の1000天使がバスケットボールをするってプリントされたやつ。

月刊宝島編集部 編『THEブルーハーツ 1000の証拠』
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22. 中原中也って詩人ですんげぇ昔の人って思うんだけど、調べたら1937年に亡くなってる。1985年結成のブルーハーツの中原中也へのまなざしタイムスリップは48年で、1989年に亡くなった抵抗の快楽こと開高健を2024年からのまなざしは35年。13年しか変わらない。フィッシュマンズとフジファブリックくらいしか変わらないと思うとどっちも最高やんけ。

文・写真:山下陽光


>> 次回「残暑/01 #3」公開は9月11日(水)。執筆者は関野哲也さん

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