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私は夢中で貪った。うまくは言えないが、空っぽの胃の容量をふさぐためだけにかき込む物質では…
突如、憑りつかれたように山口さんは咳込んだ。そしてかなり長いこと大声でえずきながらしつこ…
その時、ドアが開いた。何の抵抗も遠慮もなく、その開け方はまるで勝手口から入って来る主婦の…
山口さんは口を開けたまま死んだように眠り続けていた。機械のような音を立てて息を吸い込む音…
「住むところって……」 そう言いかけた私を山口さんは淀んだ眼で睨んだ。聞きたいことだらけ…
部屋の中に物は何もなくなっていた。そして、くすんだ染みだらけの壁紙はまっさらな新品に張り…
紙袋を手に立ち尽くしていると、プッと吹き出す音が聞こえたような気がした。私は辺りを見回した。隣のホームレスは相変わらず固まったままだったが、気のせいだろうか、その顔は必死に笑いをこらえているようにも見えた。 袋の中身はフォションの紅茶だった。私は西日のまともに当たる部屋で膝を抱えたまま、床に置いたその缶の長く伸びる影を見ていた。山口さんが廊下を通り、部屋に帰る音がした。ドアを開ける音。コンビニの袋を床に置く音。つつましい最低限の生活の音。言葉の不要になった独り者のたてる音。
私はしばらくその様にくぎ付けになっていた。そして思わず隣のホームレスに向かって「今の………
あの人とまた顔を合わせると気まずいというのもあって、それからの数日はハローワークと公園通…
「あ……」 と言ったまま私は口をつぐんだ。 考えてみれば、それはそうだ。理由もなく親切に…
「え……ああ」 何とも言えない私の口を封じるように、その人は言った。 「さっき、仕事クビ…
仕事の契約を打ち切られたのはその翌日のことだった。このご時世だ、業務用おしぼりの需要など…
コンビニに行った帰り、またあの人に会った。「あ、どうも」と互いに軽く会釈をして、そのまま…